ピーマンの肉詰め

木曜日、600グラムのひき肉とピーマン12個を買いに行く。

オーブンで肉詰めを作るのだ。

いつ息子がやってきてもいいように、ストックしておくためのピーマンの肉詰め。

半分に切ったピーマン24個にハンバーグ種がこんもりと乗って200度20分。

山ほどできた。母のところにも持っていく。

のこりはタッパーに入れ冷蔵庫の一番上の段にしまった。

夫には回鍋肉とほうれん草と卵とわかめの中華スープ。

金曜日。やっぱり肉詰めは出さない。週末まで様子をみるのだ。息子がこなかったら、日曜の晩、夫に出す。

その日の夕食は大根とちくわとさつま揚げとウィンナーで簡単おでんと、茄子と鶏肉の甘辛煮。

そして土曜。息子は来るのか来ないのか。先週来なかったからくるかもしれない。

来なくてもいい。来なくてもいいのだ。

冷蔵庫にバナナが黒くなっている。バナナケーキを焼こうか。息子が好きだ。

電話が鳴った。

「おひさしぶり」

息子からだった。目医者に行くつもりが寝坊した。今日はダラダラ過ごすよ。

「それがいいよ。ゆっくり疲れをとるといい」

あの調子じゃ今日は来ない。

歩いて数分の隣町のマンションに住む。買い物のついでに寄ったと言って届けようか。

ちらりと思う。

いやいやいや。やめておこう。求められた時だけ、提供すればいい。あっちにはあっちの都合と心づもりがある。

持っていけば喜ばれるなんて思ったらそれは間違いだ。

それから1時間、また電話が鳴った。

「あれから急いで家をでて結局目医者、間に合った。今もう来てるんだ。2時間待ちだっていうからちょっとそっちでご飯食べていい?朝からなにも食べてないんだ」

よっし!

「あぁ、そう。いいよ、おいで。」

尻尾をブンブン振っているくせに、何気ない調子で返事をした。

すぐ、バナナケーキを焼く。パスタを茹でる。冷凍していたミートソースを解凍する。

そして、ピーマンの肉詰め。

念力で呼び寄せたようで自分の魔力に驚く。

食べて、テレビを観て、二時間経つ前に「そろそろ戻って座ってるわ」と出ていった。

残り8個になった。

今夜、夫に出してあげよう。