池の前でぼんやり

鴨の雛たちは今朝も生きていた。

小さな滑り台になっている赤い遊具の上をチューっとすべっていく。

なんじゃこれはと、その面白さを発見し、何回も何回もすべっては昇っていく。

息子もそうだった。何度も何度も滑り台をやりたがった。階段を一段一段登るほうが時間がかかる。すべり台のてっぺんに立ち、下をじっと見つめてから座り、しゅーっと滑り、着地。

混雑している時は遠くからじっと眺めて列に並ばない。子供達が帰っていき人気が少なくなった頃、存分に楽しむ。そんな子だった。

私もどちらかというと気にいるとそればかりを夢中になる性分だ。

作家も、料理も、ドラマも、ラジオも。

あ、これ面白い!見つけた!と思った時の高揚感。

最近、そういうの、ないなあ。スイスイ泳ぎ回っている子鴨たちを眺めて思った。

今はそういうときなんだろう。

そのうちまたそういう波もくるかもしれない。

来なかったら・・・ま、それもいっか。

大きな鴨が雛の遊んでいるところに突っ込んできた。狙いを定めてきたかのようにつっつく。

同じ鴨なのになんで攻撃するんだ?カラスや他の生き物がやるのと違ってその意図がよくわからない。小さいから攻撃するのか。縄張りなのか。俺の方が力があるから俺様に従えということなのか。

同じ池に住む同じ種類の鳥だから、家族のようにふわふわ暮らしているものだとばかり思っていた。

そこに母鴨らしき1羽がものすごい勢いでやってきた。ちょっかいを出していた鴨を頭を低く、猛スピードで追い回す。逃げていく鴨をかなりしつこく追いかけ回していた。

ちょっと!うちの子になにすんのよっ!

いいぞ。かあちゃん

その荒っぽい追い払い方に惚れ惚れする。

息子が学校で困っていた時、私も鼻息荒く学校に乗り込んだ。

まさか自分がそんなことをするなんて思ってもいなかった。が、ここは親として真剣に立ち向かう姿を示さねばという思いの方が強かった。

同じ世界で生きているのに、同じ種類の生き物なのに争ったり守ったりし合ってる。

小さな池は地球のようだな。

それぞれ理由も言い分もあるんだろう。

なんとかみんな仲良くうまいことやれるといいんだけどなあ。