ここだけの話ですよ

博多大吉さんがパートナーパーソナリティのTBSラジオたまむすびの水曜日。

今日こそ1時ぴったりに生配信を聞きたいと、朝から買い物と払い込みを済ませ、夕飯のポトフと昼ごはんのカレーを作る。毎週、楽しみにしている大吉さんのラジオだが、夫の昼ごはんや、母からの呼び出し、その他どうでもいいことが降ってきてあっという間に時間はすぎる。

よしよし。今日は姉が休みで母も来ない。夫の食事も準備した。いける。

しかしそうはいかない。息子が、卒論のアンケートをお願いしている、どこぞの会社に送るメールをこれでいいかと見せに来る。

ざっと読む。彼は文章がうまいし、丁寧すぎるほど丁寧な人間なので、いつものように用件はわかりやすく、実に感じよくまとまったいい文面だった。

「いいと思うよ」

「ちゃんと最後まで読んだか」

「読んだよ」

「これで言っていること伝わるか?」

「伝わってるって、わかるもん」

あっさり大丈夫と言えばしっかり見ろと言うし、ちょっとでも「ここ、何々です、ってですが続いてるから、語尾、変えたら?」などとでも申し上げれば「いいんだよ、だって・・」と噛みつく。めんどくさい。

だからざっと読んで大きくとんでもないものでない限り「いいんでないの」とする。

こう書いてみると、それくらい付き合ってやってもたいした時間でもなかろうと思われるだろうが、それがそれが。

実はうちの息子はとてもとても心配性。

長所、素直。真面目。生真面目。妥協しないで何事にも向き合う。

短所。心配性。怖がり。それゆえの細かい神経。

真面目で素直な奴が心配性だったとしたら、どうなるでしょう。

そのくせ、情報をなんでもネットで集めて頭でっかちになっている場合。

妄想が膨らみ、「そんなこと起きるわけないじゃんっ」と言いたくなるようなことを本気で心配する。

「このメールが失礼に当たって、それがどっかから俺という人間だと情報が漏れて、就職がダメになったりしないよな」

するわけなかろうがっ。

「相手がムッとして、先々仕事で顔合わせることがあって、その時に、あの時のアイツだって根に持たれてなんか・・」

あるわけなかろうがっ!

怒鳴ってやりたくなるのをグッとググッと堪え、

「それは、ない」

「それも、ありえない」

「そもそも、大企業がそんないちいち、君一人にスポットを当てて追いかけてもいない」

と、時に落ち着いて真面目に、時に笑い飛ばし、辛抱強く相手する。

辛抱強くすればするほど、息子の話は長引き、「でも・・」「だけど・・」とウロウロする。そして、自分で作り上げたありえない妄想で勝手に「ああ、お腹が痛くなってきた」とこの世の終わりのようにため息をつくのだ。

2時間?3時間?いや、半日、長い時は二日、三日。自身が心の底から「大丈夫」と納得できるまでそれは遠慮なく続く。

うるさーいっ、グダグダやるなら一人で二階に行ってやってよっ!

何度この言葉を飲みこんだことか。

けれども彼は本気なのだ。本気で、真剣に怯えているので、それはできない。

 

私の体調や心のひだの細かいところに気がつき、労ってくれる息子。ああ、頼もしいなと、弱っていればいるほど、その優しい態度にしんみり感動する。

つい、ついてしまったため息にも、「どうした」と反応するのは、実は「お母さんはまた倒れて死にそうになるかもしれない」という不安からかもしれない。彼が小学校6年の時、目の前で倒れ、救急車がやってきて、いきなり、「今晩がヤマです」と言われた恐怖は根深いのかもしれない。

そう思うと、彼の怖がりに責任を感じる。

息子のありえない妄想ゆえの絡みは続く。

「あのさ。前にも言ったけど、君が想像するよくない事は、90%、妄想だから。ないから。この世はもっと安全にできている。もっともっと油断して生きても大丈夫。もし、万が一、そのメールを送って、それ関連で何か言い掛かりで訴えられたりの事件が発生したら、弁護士でもなんでも用意して闘うから、大丈夫!君は不幸にはならないようにできている!」

あんまりのしつこさに、こう叫ぶと

「母さん、なんでいつもそう腹が決まってんだよ」

とこれまた大真面目に怯える。

だって、それ、妄想ですもん。弁護士やら訴えるやら、全て、妄想ですもん。

 

「なんで俺、こんな心配性なんだろう、どうすればそうならなくなるんだ」

心配性が故に慎重なのだが。はぁ・・・。

会社に入って、こんなんでやってけるんだろうか。

「そんな事考えるくらいならこれでも読んだら?」

私が読みかけの思いっきり軽い、芸人さんの書いた日常エッセイを渡す。

「何、これ。これ読めば、心配性が治るのか」

「いや、そんな哲学めいた事書いてないよ、ただ、へえ、こんな事考えてこんなことやってんだって、笑っちゃうよ、そうやって生きても大丈夫なんだって、ちょっと思うかもよ」

今日の大吉さんのたまむすびも、生配信は敵わなかった。

タイムフリーで後からまったりお疲れを癒しましょうっと。

おせんべ準備して。コーヒー準備して。あ、ビスケットが一袋残ってたはず、それも・・。

本日のお仕事

f:id:okirakutonton:20200922152725j:image

聞いていただきたいことはただ一つ。

f:id:okirakutonton:20200922152741j:image

一人黙々 頑張ったのよぅ!

息子に成果を見せて威張る。

「働くな。なんでそう、働くんだ」

「マッタリするためじゃ。これだけ頑張ったらもうダラダラしていいよね」

「しろしろ、マッタリしろ。グレズるんだろ」

白菜切って、きのこ、もやしも用意して、今夜は鍋だ、準備完了。

さあて、グレイズアナトミー、観るぞぅ。

 

 

拙者が

「ときどきここに、短い髪の毛がパラパラ落ちてるから、ちゃんと拾って捨ててね」

洗面所で手洗いをしていた息子に言った。

朝の身支度の際にドライヤーかブラシで抜け落ちたらしきものが、そのまま放置されていることがたびたびある。見つけた時に、わざわざ呼び寄せて注意しても機嫌悪くなるだけで、お互い嫌な思いをするから、その都度、私がティッシュで拭き取り捨てていた。

ちょうど、目の前にいるので、そうだそうだ忘れないうちにと言ったのだった。

「短いなら俺じゃないよ、親父だよ」

「またすぐそうやって、人のせいにする」

夫は頭が薄い。地肌の方が優勢な状況だ。本人もさほど気にしていないようで、なんかしらのローションなど使っている様子はない。

私自身も彼の今のヘアスタイルは気に入っている。ここでもし、彼がカツラを作ると言い出したら反対する。それくらい、いい具合にまばらになっている頭は、いい感じに優しそうで穏やかな気のいい親父風で好ましい。

だからこの落ちている髪は夫のはずがないと息子に注意したのだ。

「ほんとだよ、俺の髪もっと長いよ、そんな短い毛、ないよ」

ふむ?ふむ。

言われて改めて見てみると、確かに彼の頭についている髪の毛はどれも10センチ近くはある。私がいつも拾っているのは2センチ前後のものだ。

「じゃ、あれ、父さんのってことか」

「そうだろ、俺じゃない」

「かわいそうに、まだ、抜けてるんだ」

やっぱりどこか気にしているであろう。まあ大喜びしてはいないよな。

「親父に言ってくれ、俺では、ない」

「そうかそうか。ならよいよい。私の口からは忍びなくて抜けた毛を捨てろとは言えん。よいよい、引き続き拙者が始末いたそう」

甘やかすなと、ゲラゲラ笑って息子は去った。

ま、言ったところで、きっとこれっぽっちも本人は気にもしていないだろうがの。