役に立たないこと

今日も切ったり貼ったり。

海外ドラマも観たいし、ちょっとだけ・・のつもりが気がつくと二時間半、没頭していた。

今日はレシピではなく、可愛いと思ったイラストや自分で撮った写真などをプリントアウトして手帳に貼って遊ぶ。

印象に残った言葉だったりなんでも有りのこの手帳、テーマはまるでない。

シリアスだったり、厳しかったり、ほんわかしていたり、ちょっとしみじみしたり。

統一感はないが、私に響いたものばかりを貼っていく。

それを見返すと心地良い。

自分の星に帰ったような安らぎがある。

思えば子供の頃もこんなこと、していた。

生産性も何もない。意味もない。なんの役にも立たない。

本人の私にですら、役に立たないのだ。

その、なんだこれ、というような代物の手帳のページがガラクタで埋まっていくとニマニマとしてくる。

無意味に没頭した二時間半、幸せってこういうことかも、と思った。

 

作りおったな

息子の使っていた部屋を自分の個室にしようと企んでいたが、いざ彼が出て行ってみると、いつ泊まりに来るかわからないしと手をつけないまま、半年が過ぎた。

先週、本の後始末に一泊しに来たが、最近ではふらりと食べに寄り、数時間で返る。

そろそろいいかな。

積まれていた段ボール箱に入った本の山がなくなると、いよいよガランとした。

机の上に資料と文房具が少し残っているが、あの量なら私の小さなに収まる。

土曜の午前中、思い立って実行した。

まずは自分の部屋から無印良品のパイン材折りたたみデスクを持ち込む。

そこに息子の机の上に乗っていた書類を移動させる。

細かい備品は箱に入れて机の下に置いた。

それらをビニールシートで覆い、その上に気にいっている柄のテーブルクロスを広げ目隠しをした。

何もなくなったデスクは広い。幅140奥行き60、夢にまで見た大きな机。

パソコンを広げて、その脇にノートを広げてもまだまだ余裕がある。

ベッドはシーツと枕カバーを洗い、付け直し、その上から自分のキルティングのベッドカバーをかぶせた。息子が泊まるとなったら、カバーを外せば、即、彼のものに戻る。

息子のシーツをかけたマットレス、布団、枕の上に自分のカバーが広がり、さらに自分のベッドからクッションも持ってくればもうそこは、パッと見、私の部屋となった。

嬉しい。

このワクワク感は久しぶりだ。

机をもらっても構わないと取り付けてはいたが、一応、息子に写真を送る。

「基地、完成。机の上にあったものはそのまま移動させて捨ててないからね。ベッドもそのままにしてあります。いつでも泊まりに来てください」

居場所をなくしてしまったわけじゃないとわかってくれるかと返信を待つ。

「基地、作りおったな(笑)」

戻ってきた文面にますます嬉しくなった。

ここは、ずっと欲しかった私だけの場所。

 

揺り返し

昨日、なかなか寝付けなかった。

友達と深い会話をして別れた。深部までマッサージをしたような心地よい疲労感だったが、揺り返しのようなザワザワふわふわした感情がぐるぐる巡って離れない。

「そうお?それ、いい子ちゃんになっていない?」

母と夫、姉含めてみんなを守ってやりたいという心境だと言うとそう返ってきた。

長い長い葛藤の末、たどり着いた私なりの決着だったのだが、そう言われた。

引越しなよ。今のおばさんならまだ元気だからそばに居なくても大丈夫。息子くんも巣立って、自由なんだよ。物理的に離れたらきっと心がもっとよくなる。

今しかないよ。もう50過ぎてるんだからさ。私たち。自分の人生の終わりを見据えて動かないと。

そんなこと、考えもしなかったと言えば嘘だ。十数年前、そんな妄想はした。

けれど、今はもういいのだ。

全てを受け入れた。すべての状況とそれぞれの個性と、私自身の不器用さと。

それで、いいと思う。それが、いいのだと思う。

彼女は歯痒がる。

「私のトン姉に何してくれちゃってんのよ。旦那さんもさ。ちょっとおかしい」

怒るのは、彼女が私を大事に思ってくれているからなのだ。その姿をぼんやりありがたいなあと眺める。こういう人が自分にいるのだという事実に感動すらする。

もっと自分勝手にしないと。少しずつでもいいから、なんでもいいから始めなよ。

私のためを思って熱く語ってくれるのに、心がついてこない。

ついてこないので、そうねそうねと言えない。

今の現状維持に甘んじているのは、指摘された通り、事勿れのいい子ちゃんで居たほうが楽だからなのだろうか。

違う。

「私さ、今やっと少しづつ外に目が向いて、この世の中ってもしかしてすごく優しいところなんじゃない?って思い始めたとこなんだ。まだやっとそこに立ったばかりだから即行動に移れないけど、今は体と気持ちをもっと強くしようと思う。私の60代はきっと楽しい気がする」

そう答えたが彼女は不満そうだった。

別れてからそのことが頭を離れない。

間違っているのか。怖がってるだけか。

 

夜寝る前に、もう一度考える。

どんなに大事な人でも、その人を信頼していても

心がついてこない助言だったら

従わなくていい。

自分の心に従う。

それは頑固じゃない。

臆病でもない。

 

そして目を瞑った。

 

今朝、彼女からLINEが届いていた。

「湯船に浸かりながら思ったこと。

今まで一人でよく耐えたね。頑張った。本当に偉いよ。これからもお互い助け合っていこうね」

 

ああ神様。

 

ありがとうございます。