昨日、なかなか寝付けなかった。
友達と深い会話をして別れた。深部までマッサージをしたような心地よい疲労感だったが、揺り返しのようなザワザワふわふわした感情がぐるぐる巡って離れない。
「そうお?それ、いい子ちゃんになっていない?」
母と夫、姉含めてみんなを守ってやりたいという心境だと言うとそう返ってきた。
長い長い葛藤の末、たどり着いた私なりの決着だったのだが、そう言われた。
引越しなよ。今のおばさんならまだ元気だからそばに居なくても大丈夫。息子くんも巣立って、自由なんだよ。物理的に離れたらきっと心がもっとよくなる。
今しかないよ。もう50過ぎてるんだからさ。私たち。自分の人生の終わりを見据えて動かないと。
そんなこと、考えもしなかったと言えば嘘だ。十数年前、そんな妄想はした。
けれど、今はもういいのだ。
全てを受け入れた。すべての状況とそれぞれの個性と、私自身の不器用さと。
それで、いいと思う。それが、いいのだと思う。
彼女は歯痒がる。
「私のトン姉に何してくれちゃってんのよ。旦那さんもさ。ちょっとおかしい」
怒るのは、彼女が私を大事に思ってくれているからなのだ。その姿をぼんやりありがたいなあと眺める。こういう人が自分にいるのだという事実に感動すらする。
もっと自分勝手にしないと。少しずつでもいいから、なんでもいいから始めなよ。
私のためを思って熱く語ってくれるのに、心がついてこない。
ついてこないので、そうねそうねと言えない。
今の現状維持に甘んじているのは、指摘された通り、事勿れのいい子ちゃんで居たほうが楽だからなのだろうか。
違う。
「私さ、今やっと少しづつ外に目が向いて、この世の中ってもしかしてすごく優しいところなんじゃない?って思い始めたとこなんだ。まだやっとそこに立ったばかりだから即行動に移れないけど、今は体と気持ちをもっと強くしようと思う。私の60代はきっと楽しい気がする」
そう答えたが彼女は不満そうだった。
別れてからそのことが頭を離れない。
間違っているのか。怖がってるだけか。
夜寝る前に、もう一度考える。
どんなに大事な人でも、その人を信頼していても
心がついてこない助言だったら
従わなくていい。
自分の心に従う。
それは頑固じゃない。
臆病でもない。
そして目を瞑った。
今朝、彼女からLINEが届いていた。
「湯船に浸かりながら思ったこと。
今まで一人でよく耐えたね。頑張った。本当に偉いよ。これからもお互い助け合っていこうね」
ああ神様。
ありがとうございます。