ただそれだけのこと

このところどうも調子が出ない。

具合が悪いというほどでもないけれど、どうにも眠く、だるく、やる気が出ない。

かと言って寝込むほどでもなく、家事もできる。毎朝の散歩もいつもと同じ距離を歩ける。

人に会い会話をしているときは、透き通った心になって笑う。一言二言の会話も楽しい。

なのに家に戻って夫におかえりと迎えられたとたん、パンっと魔法は消え、元に戻ってしまう。

なんとなく不機嫌。なんとなく面白くない。弾まない。

原因を探すが思い当たらない。

時々、台所に立つとシンクのあたりで微かに嫌な臭いがすることがある。

強烈ではないが気になってならない。どこからだろうとクンクンあちこち鼻をくっつけてやるがどこも変な臭いはしない。だけど、やっぱり離れて立つとどこからかフワンとしてくる。

どこだかわからないから、とりあえずとことん徹底的に掃除したら臭いは消えた。

あれと似ている。

どこがどうなっているのかわからない。

致命的な症状があるわけでもない。

でも、どうしても拭い去れないこの不快感。

初めは夫が原因かと疑った。彼の何かに苛ついているのか、不満を抱え込んでいるのか。

小さく「おいおい」ということを言ったりやったりするがそれも一つ一つは些細なことで特別許せないほどのことはない。

昨日、池で無邪気に怖いもの無しで遊んでいる鴨の赤ちゃんたちを見て、ああと思った。

残念なのだな、私は。

気力の湧いてこない自分が。

弾まない心が。

何でもおかしくてお腹が捩れるほど笑ったり、夢中になって本を読み続けるあの感じ。

あれを無くした。

そんな状態が慢性化していることがちょっと悲しいのかもしれない。

それに気がついたら少し楽になった。

ああそいうことか。

これと言った原因がなく、なんとなく気分が乗ってこず、なんとなく毎日をこなす。そうなっている今に、ガッカリしている、という状態が今、起きているのだな。

言語化してみると、ちょっと笑える。

なんだなんだなーんだ。

ただ、それだけのことか。

徹底した大掃除に相当する対処法はない。

ひたすら待つのみ。

自分に甘く、甘くやり過ごす。

夫に八つ当たりする前に納得がいってよかった。