父の日

今日は父の日。この暑苦しい日に夫の好物のおでんを朝から仕込む。スーパーでおでんのタネを探すのも一苦労だ。

亡き父には好物だったコロッケを作って仏壇に供えた。これは母たちの夕飯のおかずになる。仏壇は口実で、半分は差し入れのつもりだ。

父が一番喜ぶのは母が喜んでいる姿を見ることだろう。

死んでいくことを悟ったとき、彼は妻に「俺がいなくなっても威張って生きていけよ」と言ったという。いかにも父がいいそうなことだ。

それほど、妻に惚れていた。大事だったのだ。

母と祖母が揉めても「僕はお母さんの味方です」と理由も問わず全面的に妻を支持する。

私と母が揉めると困った顔をして、「頼む、仲良くしてくれ」と言う。

母は後ろに最高権力者の力を背負い、いつも強気だった。

お父さんにいいつけるから!

それを私たち娘は一番恐れた。父に嫌われたくなかった。

最近、母をようやく可愛いと思えるようになった。

ようやくだ。相変わらず、憎まれ口を言う。そして相変わらず私はいまだに批判され馬鹿にされやしないかと様子を伺う。

けれど、親子ってこんなものじゃないだろうか。

いつまでたってもあちらからはこちらは不完全な子供で、いつまでたってもこちらからあちらは母親なのだ。

仏壇に手をあわせる。

お父さん、私を正しい方に導いてください。いつもありがとうございます。

きっと生きていたらこんなこと面と向かっては言えない。

もっともっと話したかった。

仏様になったらきっと私の心の中まで見えるだろう。

母へのわだかまりが緩み、心の底から労わっていやりたいと思うように変化してきた今の私もきっと伝わっている。そうなるように導いてくれたのは父だったのかもしれない。

おとうさん。いつもありがとう。