ラジオの食卓

昨夜、夫とラジオを聴きながら夕飯を食べた。

毎朝聴いている番組のアナウンサーが、さだまさしさんのスペシャル番組にアシスタントとして参加し収録を終えたと、それこそ毎朝のように宣伝していた。

初めて聞くエピソードもたくさんあって、本当に僕も笑いっぱなしでした。みなさん、ぜひ聴いてください。

「これ、今日の夜でしょ。聴く?」

朝、そいうえばそう言っていた。私のさださん好きを知ってのサービスかと思い

「いや、ゆっくりタイムフリーで聴くからいいよ」

と答えた。

「ふうん」

そういって出て行った。

だいたい彼は毎晩、BSのニュース番組をはじごで観るのが好きなのだ。夕飯時はなにがあっても「ちょっとごめん」とチャンネルを変える。

ラジオ番組は夜の7時から。無理に決まっとろうが。

ところが。帰宅した夫は台所で途中まで聴いてあとは一人でゆっくり楽しむつもりでつけていたラジオに反応した。

「これ、さださんの?」

「そうだよ」

「今日、これ聴きながら食べる?」

「・・・いいけど・・・」

妙なことになった。

ラジオを聴きながら夫と二人の食卓。

ラジオというものは当たり前だが、聴く。じっと耳を傾ける。

もともとそんなに会話が盛り上がる二人ではないが、それでもテレビがついているとコメンテーターの発言に笑ったりツッコミをいれたり、わからないことを私が尋ねたりと、喋る。

じっと一つの対象に意識を向け、黙るふたり。

黙々と食べる。

しーん。

ふっ。おかしくて笑うところもそれぞれツボが違う。

やっぱり飽きているのかもしれない。実はもうテレビにしたくなっているのかもしれない。

もういいよ、と言ってやろうか。

あまりの静けさにそう思っていると

「ふふふ、やっぱりおもしろいね、さださんって」

た、楽しんでいたのか。

結局3時間番組の2時間、9時まで聴いた。

続きを私はベッドで、夫はそのまま聴いていた。

30年一緒に暮らしていて初めてのことだった。

とまどったが、味わい深い夜だった。