お手入れ

美容院に行く。

水曜日だから行く。予想どおり夫は昨夜から

「明日、飲み会入るかも」。

といそいそはにかみ頬を光らせる。

「まだ未定なんでしょ」と意地悪を言うと

「いや。確定。飲んでくる」

と嬉しそう。

そうなるであろうと水曜狙いで予約したのだ。

午後2時半。帰りにお弁当でも買って帰ろう。

夕飯のしたくがいらないのだから、ふらふら寄り道してもいいなあ。どこかで一人お茶をしてぼんやり過ごすっていうのも素敵。

あれこれ意気込んで出かけて行った。

疲れ果ててそれどころじゃない。

終わって時刻は4時ちょっと前。街はまだ明るく、活気もある。気温もほどよく暖かく、風は昨日の嵐とは打って変わって乾いていて心地いい。

そのために履いてきたスニーカー。

こんな時間から、あっちふらふらこっちふらふら時間を気にせず好きなようにしてもいい。

映画だって観られるのだ。

なのにとにかく帰ろうとまっすぐ駅に向かった。

とことん楽しもうと思っていた割に、そんな気分にならなかった。

前髪を切った。すっかり伸びっぱなしでペタッと幽霊みたいな肩近くまであったのをショートボブにしてもらった。ゆるく、パーマもかけた。

はなやぐ。

髪を整えてもらっただけなのに、すべてに前向きになれる。

ちゃんと生きようと思う。

自分を大切に扱ってやった。魂が喜んでいる。

手入れが入り、小さくリセットされた。

知らず知らず乱暴になっていた生活の軌道修正ができた。

まっすぐ生きていける気がする。

今夜はビール飲もう。