何も怒るほどのことじゃなかった。
朝、夫に布団カバーを洗うから外してきてくれと頼んだ。
あなたの布団カバー、外してきて。枕カバーもね。
息子のは先週、やった。私のも、日を変えて済ませた。
カバーを外してまた布団を入れる作業と濡れたカバーをベランダに持っていって干す作業。いっぺんにやると大変なので一日一人分づつやっていた。
今日は夫の番。自分で外すして取り付けてもらえばいいとわざわざ週末にとっておいたのだった。
寝室に上がって行ったもののなかなか降りてこない。また何か他のことに気を取られて何しに上がって行ったか忘れてしまったのかと待っていた。
しばらくして降りてきた。
山盛りのシーツにカバーを抱えている。
「息子のも全部持ってきた」
「エェッ?そっちはもう洗ってきれいなのに!」
洗ってから息子は泊まりに来ていないからまっさらで清潔なままなのだ。
「いいから」
眉間にシワを寄せて洗濯機に放り込もうとするのを静止する。
「待って!入れないで!元通りにしてきてヨゥ!」
「いいからっ」
強引に洗濯機の中に入れてしまった。
もうっ。迷惑っ。大きな声で責めた。
そのまま夫はテストに出かけて行った。
がんばってきますんで。
ツーン。
ふてくされたまま、ちらりと見て、送り出す。
何もそこまでのことじゃなかった。
疲れているのだ。体が。
先日夫の夕飯が要らなくなってラッキーと思ったのもそのせいだ。
夫が帰宅したとき、門が閉まっていて、インターフォンで呼ばれた。それにもプリプリとこれからは鍵をちゃんと持って出てくれと嫌な対応だった。
一人になってベッドに横になり、ベランダで風に揺れる布団カバーを眺めながら反省する。
二人分のカバーを布団にかける。
それほど大変な作業でもなかった。5分とかからない。
あれは八つ当たりだった。
反省。