ただの1日

レンコンは、肉詰めは・・・結局、二組、だけ作った。

二組、肉を挟むだけのレンコン、つまり4枚で挫折。忘れていた。自分が恐ろしく不器用なことを。

包丁をまっすぐ下ろしているつもりなのに均等に並行なスライスができない。斜めに刃が降りていくようで、何度やっても片側が薄くペラッペラになってしまう。

どうにか確保できたのが、4枚、だった。

諦めて残りはすり下ろし、ペラペラを細かく刻み、卵と鶏ひき肉と片栗粉でまとめたのをスプーンで油の中に落としていく。

レンコンの摺り下ろしのフライは息子の好物だ。揚げ物だからこれは冷凍しない。うまく解凍できるかまだ研究中。

これ、きっと喜ぶのになあ。

息子が好きだから作って、出す。夫も母も好きだから問題ない。

これまでそんな食卓が多かった。

これからは夫が好きなもの、尚且つ、中年おじさんの体にいいものに戻っていく。

肉詰めよりフライの方がたくさんできた。そして今日はやたらとカラッとうまく揚がった。なんだかすごくもったいない気分だ。

母のところに持っていく。

「ありがと。これ、お姉さん、大好きなのよね」

ここでも母親の思うことは同じ。

夫が早く帰ってきた。

昨夜、内緒で一人、飲んできたのが今朝、ばれた。

小さな嘘がまたばれた。

「ふーん」

とだけ言い、特に怒らなかった妻が不気味だったようでやたら早く家につき、ベラベラよく喋る。

私は、ふん、と不貞腐れ、ビールをあけた。

「これ、美味しい」

コンソメで煮ただけの野菜たっぷりのスープ。

肉っけのあるものを入れなかったが、そうか。これでもいいんだなと思う。

究極、しんどい時。ウィンナーもベーコンもない時、これもありか。

「よかったね」

そっけない返事に空気を和ませようと夫は更に言う。

「お、これも美味しい。美味しい、これ」

リメイクハンバーグ。

「ああ、それ、昨日、用意しといたから」

「ひーん、申し訳ない」

「きっと味が染み込んでいるんでしょうねえ・・」

「ひーん」

家族を感じた日だった。