皮膚科

午前、薬が無くなったので皮膚科に行く。

循環器内科は扱っていないが、やはりコロナ対策のため、病院は様子が違う。

入り口のドアの前に張り紙がしてある。

「次のような方は建物内への出入りをご遠慮願います。」

そう書いてある下によくテレビで表示される、4日以上の発熱、倦怠感などという感染を疑う必要のある症状。そして思い当たる人はこっちに行きましょうと、近くの保健所や相談センターの電話番号が連なっている。

物々しいとはこういうことをいうのか。けれど厳重警戒をやってますという感じで心強い。

受付でも体温計を渡されアルコール除菌を促された。

「すみませんねぇ、脇下のしかなくて」

受付の人が謝った。ああ、抵抗ある人はあるか。

「いえいえ大丈夫です」

気がつくと診察が一人終わるたびに看護師がドアノブをアルコール除菌している。

診察室に入ってわかったが、椅子も先生の机も毎回行っているようだった。こんなことをやっていたらなかなか次の診察に入れないだろう。現に今日はいつもより待合室が混み合っていた。なんで急に皮膚の様子のおかしい人が増えたんだろうと思っていたが、恐らくこの除菌に時間をとられて人数をこなせないことも要因だろう。

きっとあの体温計も除菌、除菌、除菌とその度にされていたのだ。

小さな手間が少しづつ加わっただけなのに、普段は割とゆったりとしている院内の空気は、いつもより張り詰めたものになっていた。

先生は大忙しなのでいつもより早口でテンポをあげている。

しかし私の体重チェックに、背骨や腕まわりの筋肉を触り状態を診ることは欠かさない。皮膚の薬だけくれればいいのにといつもこの諸々がいやなのだが、この人は私の体を諦めていないのだ。

も、いいです。私、こんなもんなんです。と心の中でめんどくさがっている本人より「よくしよう」と本気で向かってきてくれている。毎回私の顔を覗き込み、今日は疲れているとか、今日はなんだか綺麗になったとか言われると調子の悪い時は行きたくなくなる。そして体調が戻りやってくると前回の診察から長いことこなかったと注意される。

鬱陶しくて嫌だけど、この先生からは離れない。

診察を終え待合室に戻るとそこでしばらくぼうっと座っていた。

何にも考えずにただぼーっとしているとさっきの受付の人が

「トンさん、もう終わりました?」

と声をかけてきた。

あ、そうだ。診察終わったらそのまま先生から渡された診察券を受付に持っていってすぐ会計だった。

いつも行っている医療センターのシステムと混同してしまった。

すみませんすみませんと、立ち上がり会計をすませ、処方箋をもらい病院をでた。

はあっと大きく息を吸いふうっと吐く。

晴れた空。強い北風。

風よ、全てきれいに吹き飛ばせ。