朝のペコリ

公園の鴨がまた子供を産んだ。

今度は6羽。

私だけでなく朝、散歩をしている人たちみんなを喜ばせている。

「こんどこそ、ね」

「ほんとうよね」

見ず知らずの人同士の会話がきこえてくると、なんだか自分もそこに加わっているような気になってくる。

毎朝同じ時間に歩いていると、知った顔が増えてくる。

どこの誰なのか、どこに住んでいるのかも知らないが、必ず同じところですれ違う何人かの人たちとは互いに認識しあい、なんとなく、会釈するようになった。

そのうち、会釈しながら笑う。

やがて、もごもご小さな声でおはようございますと、聞こえるか聞こえないかの声で言うようになった。

小さな声も回をかさねるうちに、はっきり発するようになってくる。

「おはようございます」

姿が見えた頃からなんとなく意識して、でも、まだ気がついていないような感じであえて見つめず、2メートルくらいに近づいてきた頃、頭を下げ「おはようございます」と言いながら通過していく。

友達でもない。知り合いってほどでもない。誰だか知らない。

それでもあの場所のあの曲がり角にいくとすれ違う何人かのおなじみさん。