さて。

夜中、3時半に目が覚めてしまい、それっきり眠れなくなってしまった。

目を閉じていても、状況は全く変わらず、子供の昼寝のように眠れない眠れないとじっとしていることに飽きてしまった。

かといって起き出して何かを始めるにはさすがに早すぎる。

隣で深い寝息を立てている夫が心の底から羨ましい。

こういう中途半端に覚醒しているときというものは、普段考えていなかったようなことが頭に浮かんでくる。

表面上は普通に生活している。

なんとかこなせるようになってきたが、本当は完治していない。

私の心。

毎日をとにかく過ごして流しているけれど、向き合わなくてはならない何かを「もっと体力ついてから」と脇に置いてきた。

根本的なことの解決はまだしていない。

母とはだいぶいい関係になってきた。

私自身、もうこだわりはないつもりでいる。

なんでこんなことになったのか。

・・・・・。

・・・・。

うつらうつらしながらそんなことに思いを馳せてしまった。

半覚醒の時だから自分で自分に催眠術をかけてしまったのか、子供の頃の悲しかった場面場面がうわーっと見えてきた。

邪魔ね。使えないわね。馬鹿じゃないの。

若かった母は子供に良くも悪くも感情のセーブをしなかった。

何を着せても田舎臭い。鈍臭い。

でもそんなの、何を今更。お母さんの葛藤や苦しみも理解できた今、もう消化したじゃないか。

自分で自分に問いかける。

また一つの場面が浮かんだ。

・・・あぁ!

これかぁ。これだ!これだわぁ、私のネックは。

姉が中学受験で夕食のあと、母とテーブルで勉強をしている。

姉は5年生、私は3年生。

母は下の子供は早く寝かしてしまいたい。

風呂上りにテレビを見たがりチョロチョロしているのがいちゃあ、集中できない。

「早く部屋に行きなさい」

勉強とはわかっていても毎晩、邪魔者扱いされているようで寂しかった。

10時ごろになると、台所から二人が休憩にケーキやクッキーを食べながらお茶をする音がする。

「うるさいのが寝ているうちに」

さっきまで喧嘩しながらやっていたのに、二人がケラケラ笑いあっておしゃべりしているのが聞こえてきた。

トイレにいくふりをして、現場に突入してみた。

二人がさっと皿をテーブルの下に隠した。

「何してんの、早く寝なさい!」

プイっと膨れてベッドに潜り、布団を被った。

被った途端、自分でもびっくりしたけど涙が出てきて、声を出さないように泣いた。

うっうっというのが響いていったのか、しばらくして母がやってきた。

はぁーっとうんざりしたようなため息をつき

「なんなの」

めんどくさそうに言う。

「さみしいよう」

また泣いた。

言葉にして吐き出したのを自分の耳で聞くと、尚更惨めな子供のような気持ちになり余計泣く。

「ばっかじゃないの」

今ならわかる。

何を言っとるんじゃ、この子は。愛情がないわけないだろう。上の子も下の子も。

めんどくさいこと言いだして。・・・という意味でのばっかじゃないの。

しかし、文脈を読めない私は、その言葉に氷つき、泣き止んだ。

恥ずかしくてたまらなかった。

母は理解したようだと思い、部屋をでる。

私は「ばっかじゃないの ばっかじゃないの ばっかじゃないの」が、頭の中でリフレインし、漫画のようにグワーングワーングワーンとショックを受けてさらにいじけた。あの晩もなかなか寝付けなかったっけ。

勉強が終わって隣のベッドに姉が戻ってきたのも覚えている。

「お疲れさん。明日もがんばろうね」

甘い優しい声は姉にだけかけられている。

その隣のベッドで、馬鹿なことをいってしまった恥ずかしさで寝たふりをする私。

これも、今ならわかる。

当時中学受験をする子供は学年に数人だった。

だからこそ夜遅くまで共に闘っている長女と喧嘩したりしながらも、その日の学習を終え、寝る頃には愛おしさがこみ上げてきたのだろう。

母自身も、いっぱいいっぱいだったはずだ。今のようにママ友と情報交換することもできず、とにかく、やらねばと段取り組んでさっさと食事を済ませ、子供の勉強に付き合う。

ヘトヘトになりながら自分自身も奮い立たせているところに、次女が拗ねているのまでかまっちゃいられんよ、といったところだったんだろう。

理解できる。今なら。

 

あれが根元の気がする。

自分の存在価値に自信が持てないのは。

 馬鹿らしい。あんなことが。

でも、あれだ。

とんでもないことに気がついてしまった。

 

気がついたこと自体は多分、進歩なんだろうけども。

さて。

っ、さて。

・・・さて。

・・・・・さて?

で、どうしたらいいんだ?

 

てなわけで結局朝まで寝られんかった。

どうしたらいいんだぁぁぁっ!