金曜日に休みをとった夫が三連休開けの朝、洗面所で「ハァァぁ」と息を漏らした。
いつもよくやるのだ。
何か決定的な悩み事があるわけじゃないと言うが、聞いている方も滅入ってくる。
やめて欲しいよなあ。
「はああ」
なんなのヨゥ、もう、朝っぱらから。やめてくれよー。
あ、ごめんごめん。
これがいつもの展開なのだが、どうしたわけが、今日は違う言葉が口から出て来た。
「はあああってこと、いろいろあるんだろうけど、会社行ってくださいね」
いやいやいや大丈夫大丈夫と夫は笑う。
「そんでもって嫌な奴らもいるんだろうけど、そいつらともうまく仕事して稼いできてくださいね」
だよなあ。まかせろ。と言う。「そんな奴いないよ」と言うかと思ったのに、言わなかった。
「そんでもってさ、ぎゅうぎゅうの電車に無理やり乗って、会社までたどり着いてくださいねえ」
ふふふ。大丈夫だ。ごめんごめん。
笑ってくれたが、言っているうちに、だんだんかわいそうになってきた。
ありがたいなあ、偉いなあ。
私は専業主婦だから、今日はしんどいから休もうとか、少し手抜きの料理でとかできるけど、
夫にはその発想はない。
毎朝ウキウキ出かけるわけじゃないんだよなあ。
実際それを言われたら恩着せがましいと思うだろうけど、でもやっぱり言葉通り「家族のため生活のため」嫌でも行くときもあるんだろう。
わかっているようで、ちっともわかっていなかった。
だからと言って何か特別これから夫への態度を変えるつもりはないけれど。
心の中で「ありがたヤァ」と手を合わせるのだった。