昨日は一日、低温調理研究にハマってしまい、ついつい台所に立ち続けていた。
サバの味噌煮も、例の器具で70度、40分で出来上がる。びっくりするほど柔らかく仕上がり、本当に生じゃないだろうねぇと一人、食べてみる。
崩れるほどにやわやわなのに、熱は通り味も染み込んでいた。
すごーいすごーいと、嬉しくなり、もっと何かやってみたくなる。生姜焼き、筑前煮も同じ原理で実験開始。
耐熱性の袋に調味料を入れ、空気を抜いたら設定温度の湯の中に放り込む。
70度をキープしたお湯の中でじわじわ熱が入り、食材はふっくらしたままゆっくり味を染み込ませていく仕組みのようだ。
ついでに評判の良かった鶏胸肉もクレイジーソルトをまぶし空気をぬいた袋に入れ、一緒に入れた。
子供が夏休みの自由研究をしているかのように、いちいち、実験結果をメモにして残す。微妙な温度と時間の設定の違いで出来上がりの食感が変わる。
柔らかければいいってものでもない。
多少、歯応えのある方が好みなので、その塩梅を探っていくために記録しているのだ。
本来めんどくさがり屋で、なんでもやりっぱなし行き当たりばったりの私が、ここまで真面目に取り組んでいることが自分でも不思議でおかしくなる。
やらなくちゃいけないことじゃなく、「遊び」と面白がっているからだろう。小まめな作業も嬉々としてやってしまう。母もこのあたりをうまく利用して私を勉強好きな子にしてくれたら良かったのに。
筑前煮で余ったゴボウとニンジンでキンピラを作る。
何度やっても思うような味に決まらない。
レシピ通りだと甘すぎて、かと言って醤油を足すとしょっぱくなる。
いつかドンピシャの分量を探し当てたい。
実験が面白くて完全にハイになっているもんだから、設定時間のタイマーがなるまでワクワク待ちながら、この間にもっと何か作ろうと張り切り冷蔵庫を探す。
オムレツ用に作っておいたひき肉と玉ねぎの炒めたのを使ってコロッケを揚げた。
「スーパーでたまにコロッケ買おうかなって思うときあるけど、油がねぇ・・酸化してるんじゃないかと思うと身体によくないんだろうなってやめるのよ」と母が言っていたのが頭にあったのだ。
たくさん作ってサバの味噌煮と一緒に持っていってあげよう。息子もサバと筑前煮だけじゃ物足りないだろうし。
ちょこっとおやつがわりになるよう、ゴルフボールサイズに丸め、片っ端から揚げていく。油がねぇと言っていたが、申し訳ない、この油も昨日、かき揚げを作ったときのもの。ま、よかろう。とドボドボ新しい油を足した。
途中、近所の友人が買い物帰りに寄り、30分ほど喋っていった。
あとは結局ずっと台所で遊んでいた。
夕方、喜ぶだろうと母のところに二品持っていくと
「これ、なあに?」
とサバを突っつく。
「サバの味噌煮。柔らかいでしょ」
「ふうん。これは?あ、コロッケ。あらまぁありがと、体操教室にいく前に1つ食べてこ」
サバよりコロッケに反応してていた。
好きなことだけをして過ごした。
心は満足。
満ち足りてと書いて、文字通り、満足。
しかし。
1つ大きな失敗をやらかした。
楽しさに夢中になってペース配分を間違えてしまった。
気がつくと、足が棒のように硬くジンジンする。
頭の中もぼうっとし、若干痛く、食欲もない。
使い果たしてしまった。
夫はいつもの通り、どれを食べてもとりあえず美味しいと言う。
息子はコロッケから真っ先に食いつき「お、これうまい」と喜び、サバの味噌煮は無口にやや渋々箸をつけていた。
母の食欲は21歳の青年と同じなのであった。