海に潜る

雨が降っていたので、夫が朝、家の前に出した古紙回収の袋と段ボールを自分の家の中に運んでおいたと得意気に母が言う。

「まったくあの人は。言っておいて、私が取り込んでうちの玄関に置いてあるわよ。雨が降っているのに、みっともない。品が悪いわよ」

いやいやいや。

小雨だから出しておいてよかったのに。

来週、倍量になった大量の古新聞を回収するほうが気の毒に思う。

あの程度の雨ならびしょぬれにはならなかった。

「どうせやってあげるなら大きなゴミ袋を被せておけばよかったのに」

そう言うとムッとした。

「だって品が悪いわよ」

夫に言っておいてねと念を押されたので「ふーん」と曖昧な返事をする。

たぶん夫は笑って聞くだろう。

「戻しちゃったの?お母さんとこに今、あるの?」

とゲラゲラ笑うだろう。

わたしはなんとなく、嫌だ。

うちから出した紙テープでまとめた段ボールと古新聞と雑誌が母のところにある。

なんか、いやだ。

みられて困るものはないのになぜ、こんなにひっかかるのだろう。

午後、今日もまたレシピの整理をする。

切ったり貼ったり、楽しい。

あっという間に時間が過ぎて気がつくと6時だった。

没頭している時はそのことしか考えていない。

深く深く自分の海の中に潜っていく感じ。

海に潜って戻ってきたら、いろんなことはどうでもいいことに変化していた。