手帳の整理をしていたら、ずいぶん昔に書いた日記のようなものがでてきた。
息子が中学生の時のものと、大学生になってからのもの二つ。
中学生の頃のほうは、ちょうど反抗期でいつも深夜までインターンネットの中を彷徨っていた。学校からまっすぐ帰ってくると自室に篭り、夕飯も一緒に食べない。呼んでも「後で食べる」といってなかなか降りてこない。そんな時期だ。メモはネットで知り合った大学生たちと池袋にカラオケをしに行くと言い出し、それを送り出した後に書いたものだった。
夕方の繁華街に中学生が行くと言い出した時のやりとりと、それを認めるまでの私なりの葛藤と結論。
そのくせ息子にはオロオロしていることこを見せるものかと強気で対応したのだった。
「息子の言葉を信じて送り出す。それでも狼狽えている自分がなにかに負けたかのような気分だ。」
そう書いてあった。
何に負けたっていうんだ。
今の私が笑う。
もう一つは、親バカ全開。
アルバイト先で、インフォメーションのアナウンスの研修で、褒められたというのを聞いて大喜びしている。小さい頃から鉄道の車内アナウンスの真似をいつもいつもしていたのだから、うまいのだなどと、浮かれている。
バカだねぇ。
今の私がやっぱり笑う。
中学生の親をしていた私は、先が見えないから用心深かった。いつも、この選択はこれでいいのかと、瞬時に考え判断した。
大学生の親の私は、浮かれながらも様子をみている。彼がやっていること、選ぶことを眺めながら、大きく道を逸れていないかとハラハラする。
社会に送り出す前の総点検のよう。
ほんの数年前ようでずっと昔のことのようだ。
あの頃の息子も、あの頃の私ももういない。
メモを印刷してペタッと今の手帳に貼った。