母が我が家のゴミを持ち帰って玄関に詰んだというのが気になって、実家の玄関に行く。
あれ。ない。
いつも新聞を入れるのに使っている紙袋はなく、かわりにどこか上等なお店が使っているような品質のいい厚紙の紙袋に雑誌や新聞がきっちり入ったのが二つ、ある。
中身は経済誌と医学誌のようだ。新聞の会社も一緒に入れてある広告も見覚えがない。実家で購読しているものでもない。
段ボールはどこかの温泉水を取り寄せたときのもののようで、それが三つ、畳んで置いてある。
どうやら母は収集所に出されていたものをすべて持ってきてしまったようなのだ。
「この雨の中、古紙回収出しているのお宅だけだったわよ、みっともない」
と言っていたが、彼女がせっせと運んできたものは、お隣の学者さんが出したものなのだった。
それでは我が家のはどこにいった。
あちこち探しまわると庭に置いてある燃えないゴミを出すとき用の、大きなカートにすっぽり納まっていた。
3件、もしくは4件分のものを撤収してきてしまった。
ご近所中のものを。
自分の家の廃品が実家の玄関にあるというのにひっかかっていたが、よその家のものを持ち帰ってきてしまったと知ると、そんなことは些細なこととなる。
「やばい」。
来週、これらを一気に出すのだ。
そのときにご近所さんが「あれ?」と気がつかないことを祈る。