ラタトゥイユ

どうにか1日が終わっていく。

今日は久しぶりの絶不調だった。

雨のせい、低気圧のせいと思うがその横でフンフン鼻歌を歌いご機嫌でいる夫を見ると、なにか不平等なものを感じる。

頭の中になにか、砂袋のようなものを埋め込まれたようで思考が止まっている。なにも感じない。喜びも、悲しみも、感動も、憤りも、なにも。

平穏といえば平穏で、なにを言われようと、なにを見ようとなにも感じない。

ときどき、思考がとまるあまり、宙を空に見つめぼーっとしてしまう。

どうしたのと、夫に聞かれ、ハッと我にかえる。

いかんいかん。

こういうときにうっかり怪我をしたり火傷をしたりするのだ。

午前中は床に転がり目を閉じて過ごす。

それでもやがて立ち上がり、ラタトゥイユを拵える。

とても台所という気分じゃないがそれでも冷蔵庫からナスやらにんじんやら玉ねぎを取り出すのは今日が金曜日だからだ。

週末、息子が来るやもしれん。

そのときに持たせるなり、食べさせるなり、野菜補充のためのラタトゥイユ

来ないかもしれない。そのときはそれはそれでいい。

無駄になるかもしれないが、万が一、やってきたら持たせてやりたい。

まるで愛人じゃないか。

この健気な姿勢を、夫にも照れずに示せよなあと玉ねぎを切りながらぼんやり考えた。