贅沢

夫が昨夜、明日飲み会になったと、ちょっと罰が悪そうに言った。

「ありゃ」

そう答えると一層、申し訳なさそうにする。申し訳なさそうにしているけれど心の中はもう、嬉しくて嬉しくて。頬が上がり鼻の穴が膨らんでいるのでそうだとわかる。

ありゃ、と一応言って戸惑いを表現したこちらも内心、小躍りしている。

先週末は住宅メーカーの定期検診があったり選挙に行ったり、息子が急にやってきたりと人の出入りが多く、時間に追われた。

寝込むほどでもないけれど疲れていた。

夕飯を夫の帰宅を頭に入れて用意するのは苦痛ではないが、それをしなくていいとなるとやはり、ラッキーと思う。

「ごめんね」

「いいよ、大丈夫」

どちらも小さく浮かれているのを隠しつつ、平和に言葉を交わす。

今朝、散歩をしながら何か特別なことをしようと考える。

夜を気にしなくていいんだから夕方からの上映を観に行こうか。

久しぶりに神保町もいいなあ。

無印良品も行きたいし。

それとも早めに出てどこかで美味しいコーヒーと読書もいいなあ。

夫を送り出し、朝食をとる。

頭は焦って何しようどうしようとくるくる回るのに身体が動きたがらない。

食べ終わったまま寝転がっていたら眠っていた。

目が覚めると11時半。

せめてスーパーに自分用のお惣菜を買いに行こう。何もしなくていいように。今日はお皿だって洗いたくない。

そう主張する脳みそにやっぱり身体の方はぐずぐずしたがる。

午後1時。

もう今日は一日家にいよう。ありあわせのものを適当に食べてダラダラしよう。

よく考えたら丸ごと1日を自分のために好き勝手に使うことこそ最高の贅沢だ。

早めにお風呂に入って、お風呂で本読んだりラジオ聞いたりしよう。

たっぷり過ごそう。