笑ってたし

日曜日、隣街の無印良品まで行こうとバスを待っていたら携帯が鳴った。

息子だった。

「今ジムが終わったとこなんだけど、先週忙しくてちょっと疲れちゃって・・あのぅ、これから昼ごはん食べにいっていい?」

珍しい。

「いいよ。」

「夜もいい?」

「いいよ!」

利用だろうが甘えだろうが嬉しい。

体が弱くスタミナのない母親だったから、散々心配をかけた。気遣いと遠慮でどっぷり寄りかかってきたことがなかった。

疲れたから何か食べさせて。任せて任せて任せて。

バスに乗る前でよかった。そのまま引き返しスーパーで肉を買う。お煎餅、アイス。とにかく彼が好きなものを買おうとする自分に気が付き、落ち着け、ハイテンションになっている、普通でいいのだと、もう一人の私が囁く。

牛肉とピーマンとにんじんを甘辛く炒めたものと、昨夜の野菜だらけのスープを出した。

お煎餅とアイスクリームも食べてしばらくテレビを観ている。

そして

「なんだかこの家に来たら行きたくなってきた」

ここ数日スムーズでなかったお腹が動き出したとトイレに向かう。

出たと晴れやかな顔をして戻ってくると

「ちょっと寄り道して行きたい店があるから、夜はやっぱりいいよ。3時になったら帰る」

ああ、そう。ちょっとがっかり、ちょっとホッとする。

そこに連絡を受けた夫が大急ぎで帰ってきた。6時過ぎになると言っていたのを全部放り投げてきたのだ。

「あれ、夜ご飯食べて行かないの」

「おう、もう帰る」

「食べてけ」

「誰が作るんだよ、オメェは何もしないだろ」

お腹を満たし、お腹をスッキリさせ、笑顔でまた戻っていった。

「ありがとな」

もしかしたら顔を見せに寄っただけかも知れない。

もしかしたら配置換えした職場に疲れているのかも知れない。

やってきた時の顔と全身をサッと見た。大丈夫。ちゃんと生きてる。ちゃんと笑ってる。

夜までいなかったのは私への配慮だったのか、それとも単に寄り道をしたかったのか。

なんでもいいや。なんでもいい。

笑ってたし。