労わろう

昨日、夫が早く帰ってきた。

雨だったので1日中家に篭り、台所で作り置きをし、本を読み、海外ドラマを2話、観た。めずらしく「あれもやりたいこれもやりたい」をうまく消化できた日だった。

早めにお風呂に入ってのんびりちゃぶ台でドラマの続きを観ながらたべよう。

ラジオを大音量にして、風呂につかる。

と、そこに夫が帰宅した。

あらら。でもそれもいいか。息子が出ていってから夫との夕食が楽しい。

ニュースを観ながらふたり、言いたい放題、旅ものを観ては「おいしそうだけどあの人たちよく何件も回って食べられるねぇ」。内容のない無責任なことで会話が続く。

昨夜も瞬間的にそれを期待したのだろう。

あら、早いのね。ちゃぶ台でドラマは予定変更だけど、ま、いっか。ハンバーグ、作っておいてよかった。

午前中から立ったり休んだりを繰り返しながら作っていたのは半分以上は息子に持たせる用の冷凍食品だった。豚丼の素だの肉団子だの、簡単でボリュームのあるものばかりを作る。疲れてきたので今晩はのこっているミートソース使ってオムライスにしようかと思ったところ、私の中の天使が、夫にもなにか作ったら?と囁いた。

冷凍庫にあった挽肉で煮込みハンバーグを作り、半分を母のところに、半分を夫の皿に乗せた。カットしておいた小松菜と息子の作り置きで残っていた半端野菜を突っ込んでコンソメでスープにした。

あーつかれた、さー、お風呂入ってドラマの続き観ながらご飯たーべよ・・・だったのだ。

「おかえりぃ、はやかったねぇ」

急いで風呂からあがり、作っていたものをお盆に並べる。ええい、サービスだ、粉吹き芋を追加した。

いただきまーす。

ありがとう、これおいしい。喜んでいるのはハンバーグではなかった。たった今、レンジでチンして作っただけのジャガイモ。

まあ、いい。好きだもんね、ジャガイモ。せっつくのはよくない。

じっとハンバーグを食べるのを待つ。きっとこっちのほうはもっと喜ぶ。

・・・。

テレビに集中している。

早くたべろよ。

・・・・。

テレビに夢中に・・あれ・・。

寝てる・・。

寝てる!!

「ちょっと、寝てんじゃん!」

「あ、ごめんごめん、寝てない寝てない」

「ねてたじゃーん!!」

さっきの心優しき天使はどこいった。悪魔の私が責める。

「もうこんなんだったら一人でさっさと好きなドラマ観ながら食べればよかった」

起きてる起きてると体勢を整え、テレビを観てるんだと言い張る。

「ご飯だって途中じゃないかぁ」

「あ、食べるよ食べる、ちゃんと食べるから」

無理に食べるかのようなその言い回しがまたおもしろくない。

結局、夫は完食したもののそのまままたすぐ、寝た。

ちゃぶ台に移動してヨーグルトを食べる。

つまらんつまらんつまらん。

気持ちを立て直そうとクラシック音楽YouTubeを無作為に流す。

寝よ。

テーブルで寝こけている夫を置き去りに、二階にあがった。

夜中、目覚めるときちんと寝巻きに着替えて風呂も済ませてベッドに入ったらしき夫が大音量のイビキをたてていた。

疲れてんだなあ。

なぜ、もう少し労わってやれなかったか。

そして今朝。

散歩から戻るとやっぱりいつものようにメガネをはずして新聞に顔を近づけている夫がこちらを向いた。

おはよう。

おはよう。

今日こそ、優しく。