おおきなお世話

自分でもなんでそこにそんなに引っ掛かっているのかわからない。

今朝、公園を歩いているとランナーサークルらしき数人が地面に丸くなって準備運動をしていた。

寝転がり仰向けになって両足をそろえて浮かせ、上に下に移動させている。

「はい、腹筋だよ〜。女子は大事だよ。女の子は腹筋、特に大事だからね〜」

その仲間たちの数人が笑いとも言えないが、苦笑でもないあいまいな、でもやっぱり笑いの含まれた反応をしていた。笑ったのが男性だけだったか女子も含まれていたのかわからない。

私はそこを数秒、立ち止まらず通過しただけだった。

なのに、それからずっと、そのセリフが耳に引っ掛かり、だんだん不機嫌のタネのように固まった石ころが頭の中を転がっている。

中年の男性だった。女の子は腹筋が大事だよ。

それは出産をイメージした発言だったのだろうか。私が勝手にすぐそれを連想しただけだろうか。

出産を軽々しくケロリと言ったからカチンときたのか。

産まないけれど男だって子供ができたらその女性と子供の負担が軽くなるように力を使う。そのときだって腹筋や体幹はあったほうがいい。しかしやっぱり、体の中から一つの命を自力で出すことはそんなもんじゃない。

女の子はという表現にどこか、他人事のような無関心さを感じた。

女の子は子供を産むものと思い込んでいる浅はかさも感じた。

そしてそれを大きな声で叫んでしまうデリカシーのなさにムッとしたのだ。

たぶん。そうだと思う。

私は勤めていた時、おじさんたちにお茶入れてと言われても全く気にならなかった。

嫌いな作業でもないし、めんどくさいと思う人、めんどくさいと思わない人がいるなら、後者がやればいい。

だけど、飲み会でお酌はしなかった。それは私の仕事じゃない。

「そんな気が利かないことだとお嫁に行けないよ」

「こんなことにこだわる人なら一緒に暮らせません」

そう言って笑っていた。

気難しいねとおじさんは苦笑いしていた。

仕事中、だれか話のわかる男の人いる?と電話で言われた時も腹はたたなかった。

まあそうだよね。私の話し方も声のトーンも頼りなく思うんだろうなと、自分が未熟なんだと自覚していたからだ。

「男の人って言ってます」

不貞腐れたふりをして目の前の先輩に受話器を向ける。

その先輩は「はいはい、お電話変わりました。あ、はいはい、その件は今の女性が一番詳しく把握してますんで戻しますね」と言ってニヤリと笑うのだった。

それとはちょっと違う。なんでこんなに嫌悪感を感じたんだろう。

私が流産をして妊娠するまで5年かかったからだろうか。

その輪っかになって寝転んでいた女の子たちはケロリとしてただろうに。

なんで私が。。。余計なお世話じゃないか。・・・やだわ。

太陽の昇る時刻が少し遅くなった。梅も咲いた。春が来ている。