父さん喜ぶ

豆まきは夫がしてくれた。

日曜の朝。外は雨。昨日から天気予報でそれはわかっていたので昨夜はビールを飲んでいい気分の夕飯。

息子が食事中、電話をしてきた。

私の携帯が鳴ったとたん、夫が立ち上がる。

「息子だ、息子だよきっと!ほら息子!」

うるさい・・。

「ああ、俺。今親父に電話したら留守電だったから。たぶん、2階に置いたままなんだと思ってこっちにかけた」

「ああ、ここにいるよ、変わる?」

会話の内容を知りたくて、私の顔を覗き込んでいた夫の顔がパッと明るくなった。

今朝、息子からの電話のときに「父さんが息子から電話こないなあ、こないなあ」って言ってるよと話すと「するかよ」と笑っていた。

それを思い出したのかもしれない。いい奴。

「ああ、どう、元気にやっとるか」

ほっぺが崩れそうなくらいにデレデレの表情をしているくせに、父親っぽく余裕をみせる。

ちょうど8時にかけてきたのは、これからはじまるサッカーの試合のことで語り合うため。

「ああ、そう、配信はいったんだ」

私から聞いて知ってたくせに。ふっふっふ。

「母さんに変わろうか?え、いいの?あ、そう。じゃあ、始まるな、またな」

自分だけで会話が終わってかまわないというのも、心をくすぐる。

いそいそ携帯を元の位置にもどしてくれた。

お皿も洗ってくれた。

「来週、返ってくるんだって。鍋でもしてやろうか」

「へぇ・・息子に伝えておくね。父さんがお鍋作ってくれるって」

「ひーん、トンさーん」

平和。ご機嫌。なんとなく満ち足りた。