朝の電話

朝、出勤前の息子から電話がかかってきた。

今、洗濯をしているという。一週間溜め込んで懲りたようだ。カーテンレールだけの室内干しでは間に合わないほどの洗い上がったシャツを、壁の出っ張りや鴨居、ありとあらゆる所に吊り下げた写真を前回、見た。

「今から出かけるのにエアコン消してこのまま出てっても、乾くかね」

「乾くでしょー」

たぶん。もし生乾きだったとしても、帰ってエアコンつけてたら明日の朝にはバッチリだよ。と付け加えた。

「そうか」

だんだん食べるもののネタが切れてきた。昨日は母さんが教えてくれた、あの、おかずと鶏おこわがセットになったやつ、あれ食べた。

「あれ、うまいな」

冷凍食品のコーナーでいつもそこだけ凹んで減っている。ワンプレートにおかずもご飯もセットになっているのだが、他の種類もあるのに何故かそこだけ、いつも減っているのできっと美味しいのだなと思っていた。

それを、息子が引っ越した初日、彼を連れて近所のスーパーに行き、「困ったら、これ。たぶん、人気」と教えたのだった。

「よかったじゃん。それにみかんでも食べとけば大丈夫だよ」

大丈だろうか、とちらと思う。でもここでは大丈夫なことにする。

「今週末、サッカーがあるから帰ってこないでしょ」

サッカー日本代表の試合を独占中継する配信会社に1ヶ月だけ入ろうかと思うと言っていた。その試合が昨晩始まったとラジオで聞いたばかりだった。

「ああ、そう、来週は帰るよ。昨日、見れなくてさ、奴らも考えててさ、1ヶ月経って退会しようとしても、退会手続き中期間ってのがまた1ヶ月あって、その間も月会費は取られるんだ。それで躊躇したもんだから、まだ入ってない。」

「いいじゃん、2ヶ月でも。その間も何か試合見てれば。楽しめ。テレビもないんだから。じゃあ、次の試合、今週末だって言ってたからそっちでそれ、観るんでしょ」

「うん」

食べ物、時間を決めて渡しにいこうかと、言おうと思っていたが、やめた。

冷凍庫にパンパンの惣菜と食材。1ヶ月保つから息子が来た時そっくりそのまま持って行かせればいいけれど、できることなら、渡してから1ヶ月、っていうのをたくさんにしてやりたい。

今週はあれをこっちで食べて、また作り直すかな。

豆蒔きのことは言わなかった。

夫も土曜はどこか出かけると言っていたな。

「あーた、どうすんのよ、今年の節分」

とりあえず今夜、夫に言ってみよう。

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高速道路の下で朝陽を浴びる鳩たち