祭り

寝てない・・・。

正確に言うと9時半には布団に入り、深夜12時に息子に起こされ、パイプハンガーの梱包と布団の梱包を手伝い、それは2時前には済んだのに、そこからなぜか寝付けず、朝を迎えてしまった。

予定では今朝、少しだけ早起きをして仕事前にそれまで使用していた羽毛かけ布団のカバーを取り替え、梱包しようと言っていた。その時に夏用のタオルケット、シーツなども一緒に入れれば良いと準備しておいた。

それが夜中、ハンガー類の梱包がうまくいかなく、疲れ切った息子はお腹を壊し、癇癪もおこし、もうこれらの服は全てダンボールに突っ込むことにしたとわざわざ私を起こして言う。

一人で作業をして、うんざりしたのだ。誰かに言いたくなったのだろう。

「せっかくパイプハンガーのついた上着用の箱を注文したのに。あれ、便利だよ。使ったほうがいい。今、やけになって雑に突っ込んだら向こうでしまう時、シワだらけでやんなるよ」

スチームアイロンをかけるなどと、返答してくるが、そんな慣れないこと新生活で極力減らしたほうがいい。

「きっと思っているよりシワだらけになるよ。使いなさいって」

普段、あまり命令調は使わないほうだが、ここは、喧嘩になってでも使わせたい。

いつものように「納得いくようにすればいい」と構えていられないのはきっと私も気が立っていたのかもしれない。

「どれ」

起き上がり、箱を見る。本人が歪んでいるからこれはダメだと言う箇所を確認するがちっとも歪んでいない。

「布団カバーを外して洗濯機に入れて、ついでにシャワー浴びておいで」

その間に、速攻、箱にワイシャツやらスーツの上着やらをちゃっちゃちゃっちゃと段ボールの紙パイプに引っ掛ける。ぴったり、隙間なく、ちょうどいい具合に収まった。

中身の納まり具合を見せてからにしようかと迷ったが、またあれこれイチャモンをつけられると面倒なことになる。さっさとテープで閉じた。

歪んで隙間が開いて綺麗に閉まらないと言っていた箱の上部はぴっちりくっついた。

そこにシャワーを済ませた息子が上がってくる。

どうよ

おお・・・やってくれちゃったんだ・・ありがとう。

どうせならもう、寝具も済ませてしまおうとドタバタやっていると、夫が物音を聞きつけ上がってきた。

夫は何をするでもないが、加わり、箱を動かしたり、「すごいなすごいな」とはしゃいでいる。

ちょろっと手伝ってまたさっさと寝ようと思っていたのが、少し変わってきた。

この前日のどんちゃん騒ぎの夜もまた、いつか笑って夫と話すのだろう。

「ついでにダンボール、二つ、新しいの作って」

夫に命令し、階段においておいた当座の食糧セットやら洗剤も箱にしまう。

これも本人に今朝、やらせればいいと思っていたのだが、この祭りの勢いでやってしまおう。

「はいはいはいはい」

仕事をいいつかり張り切る夫。

普段、自分の部屋に父が出入りすることを禁じる息子も、今は穏やかになにやら話している。

二人で紙テープを貼り、箱を作る。

そこに私がレトルトだの即席味噌汁だの入れていく。

「もう、これで本当に大丈夫だよ。仮に今、集荷の人が来てもなんとかなる。私は寝る。おやすみ」

それが2時だった。

夫も退散。二人寝室に戻る。

「トンさん、大活躍だったね、お疲れさん」

「うーん・・・おやすみ」

息子がまだ一人、残りの作業をする音が聞こえてくる。

さっきまではなんともない物音が急に、悲しみを帯びた音に聞こえる。

気のせいだ。勝手にセンチメンタルな心情を想像しているだけだ。

目を閉じて寝ようとするのに、夫のいびきと寝息が煩くて眠れない。

・・・・。

これもまたよし。

あの晩は眠れんかったなあ・・と苦笑いしてまた数年後、思い出す。

荷造りに参加して、良かったときっと思い出す。