回復

スッキリしている。もう大丈夫。

歩けることが、嬉しい。時々こうやって日々の、家事とその辺ちょろっとの買い物と散歩が、それだけでもどんなに奇跡的なことか思い出す。

家族の朝ごはんを用意する、そんなことも10数年前の私にはできなかった。

普通はふつうじゃない。奇跡。

昨日、薬がなくなったので、近所の薬局に買いに出た。

数歩進むと立ち止まり、また数歩。心を無にして前進する。やっとの思いでたどり着いた店は暖房が効いて暖かい。

「ロキソンください。」

「どのタイプにします?」

「一番早く効くの。」

「じゃあ、これですね、一分一秒でも早くっていう人のためにってほら。」

本当にそう書いてあった。

「それ!それです。もう、ほんと、一分一秒でもって感じです!」

そうやりとりをしていると奥から顔馴染みのお姉さんが声を掛けてくれた。

「こんちわー。」

「こんにちわ。・・・やってしまいました。」

「あー。それ、いいですよ。」

「そうですか、いま、一番早く効くって教えてもらって。」

余計なの入ってないから、キレもいいと深刻そうでもなく、かと言っていい加減でもなく、笑顔。

私のぐったりした様子を見て、薬を勧めてくれていたおじさんが、会計をしながら

「どんなに辛くても最低4時間は間開けてくださいね」

気の毒そうに言う。

お姉さんも横で頷く。その優しさが嬉しくて

「ありがとう。なんだか薬を買っただけで安心して良くなった気分。」

薬を受け取りつい、そう言った。

「え、でも顔色はいいですから。大丈夫!」

おじさんは真顔で言ってくれた。

その横でお姉さんもブンブン頷く。それからお姉さんは手を振って

「お大事に〜。」

いい感じでヘラヘラ笑って送り出してくれた。

顔色はいいですよ、大丈夫。

その寄り添った一言が何故かやたらと沁みた。

あの薬が一番効いた。