酔っ払いと腹ペコ

結局あの不安定な味のスープについては特に何を伝言するでもなく、先に寝た。

10時過ぎ、駅からの道すがら一緒になったらしく、二人がガヤガヤ帰ってきた。

ただいまーただいまー、トンさん、帰ったよー、帰ってきましたー。

ご陽気な夫の声にかぶさるように

うるせえんだよ、寝てんだろ。

そういう息子も

玄関に届いたダンボール、引越しまであのままあそこにおいといていい?

寝室のドアからひょっこり顔をだす。

眠りから一瞬にして呼び戻された。

父さん帰りましたー。

だから声がでかいんだよ!酒臭えな。

お風呂沸いてるよ。

俺、明日も出社になった。テレワークのつもりでいたけど今週は無理だ。今日、昼、食べられなかった。課長がお土産でみんなに配ったどら焼きがあったからそれだけ食べた。あれさ、緩衝材、一個で頼んだんだけど、あんなでっかいのな。ロールで見ると。

なんだかんだで食器やパソコンとか、電気スタンドか包んだらあっという間になくなるよ。

そうか。で、ダンボールとあれ、あのまま置いといていい?

いーよ。

父さん帰りましたー。トンさんありがとねー。

だからオヤジはうるさいんだよっ。

ベッドフレームの頭の方で酔っ払いと空腹の青年は大きな声で戯れる。

うるさいうるさいうるさい。一人は早くご飯お食べ。もう一人は風呂入って早く寝なさい。わたしゃもう寝ます。出てってください。

おやすみー。

はいおやすみ。

トンさんおやすみー。

おやすみなさい。

目を閉じて思う。

あの様子じゃ大丈夫。腹ペコと1日の疲れとで、スープの味がどうのこうのどころじゃない。

金のハンバーグに加え、昼抜きの胃袋が怪しいスープをうまく誤魔化してくれる。

 

こんなうるさい夜もあと少しかあ。