朝、散歩していたら懐かしいものを見つけた。
今もこんな遊びをする子供がいるんだと嬉しくなる。
蝋石。駄菓子屋の隅に売っていた。けれど近所の公園の砂利の中によくかける石があってそっちを使う。蝋石は特別。普段はよく描ける石。他の石よりちょっと色が薄く、触感も柔らかめのものがよく描ける。そういうのを探して見つけるとしばらくはそれが使えるので大切箱にしまっておく。
けんけんパーも、ロクムシも、刑ドロの牢屋にも。悪戯描きも。
「あなた昨日、落書きして遊んだでしょう」
買い物の道すがら、地面に次女の筆跡を見つけた母が言う。
「恥ずかしいからあっちこっちで描かないで」
雨が降るまでしばらく残る。意味なく自分の名前を書いたりするとそれも残る。今思うと無防備な時代だった。
蝋石を買うと、大事で大事で、少し使ってすぐしまう。本物はちょっと引いただけでするする綺麗な白い線ができる。その分、減りも早い。
もったいなくてちびちび使った。
あの頃。
暗くなって友達の顔が見えなくなって、やっと家に帰った。
缶蹴り。色鬼。高鬼。
今日の朝焼け。
鳥達が電線に戻ってきた。