朝の散歩に、いつもラジオを聴いている。
携帯のアプリとBluetoothのイヤホンでラジオを聴きながら歩く。いつもここで、このコーナー、このCMがはいってここで時刻を言ってくれる。交番の前を通過する頃、この番組がはじまる。
毎朝同じ声、同じ番組の流れが知らず知らず私を支えてくれる。マラソンの同伴者のような心強さ。
歩き始めた頃、イヤホンをしていたのは、一人の世界に閉じこもっている延長だった。
外界と一線おいて、このラジオの世界につかる。家の中でいつも聴いている声が一緒についてきてくれているから、気分的に、ここは私の家の延長と思えて安心した。
今朝、その携帯の充電が残り少なくなっていた。
動揺する。電話をかける予定もないのに激しく動揺するのは、ラジオもそうだが、歩数計。
毎日帰ってくるとどれくらい歩いたかいそいそと確認する。
頑張って歩いた日は8000歩になっている。
調子がでなくて省略コースにすると、5000もいかない数字が表示されている。
毎朝ミニテストをしていた学生の頃だってこんなに数字にふりまわされなかった。
頑張って勉強し100点だと張り切ったのがもどってきて80点だったとしても、勉強しないで臨んで60点だったとしても
「こんなもんかあ」
と気楽なものだった。
それがどうだろう。毎朝、この数字にムキになる。
自分の頑張りを測るものがなくなったからだろうか。
学生の頃は成績表、社会にでれば評価と給与。
一生懸命作ってもだれも褒めてくれないなどと、そんなことは思っちゃいないが、どこかで自分のなにかを認めてやりたいとでも思っているのかもしれない。
登れなかった階段を登れるようになった。歩けなかった距離を歩けるようになった。ラジオ体操のジャンプするところ、ちょっとだけ飛べるようになった。
それじゃあダメなのね。数字が欲しいのね。
はい、今日は何点。よくがんばりましたってのが欲しいのね、
充電12%になった携帯を念の為コートのポケットに入れて家を出た。
ラジオは聞けない。
数字もラジオ番組のアナウンサーたちも今朝はない。
ひとり、いつものように歩く。
おイッチにおイッチに。