棚ぼた

大きな自分用の机が欲しい。

パソコンを置いてタブレットや携帯を置いて、読みかけの本、ノートやなんかを置いてもまだたっぷりスペースがあって、そこにお盆を持ってきてお昼を食べる余裕のあるくらいの。食べ終わったお盆をぐいっと端に寄せ、読みかけの本をまた開く。足元には電気ヒーター。立ち上げっぱなしのパソコン。思いつくまま気が散るままに任せぼんやり過ごす自分の場所。

キッチンで配膳用に使っていたミニテーブルをつなげて悦にいってた時もあったが、有り合わせの二つの机は高さも色も違う。引き出しもない。不安定で結局元通りの小さな無印の折りたたみデスクだけに落ち着いた。

この狭さも基地感があっていいが、ひとつやっては片付け、またひとつ広げなくてはならない。不思議なものでその些細なワンクッションが億劫で手を伸ばさない。

頭でパッと思いつくあれこれ。

やりかけの刺繍。塗り絵。友人に手紙。読みかけの本。

これらを全て手の届くところに置いておきたい。

こたつの周りにあれこれ置いておくように。

ニトリIKEAのサイトを物色するといい感じのものがあった。ブックマークをしておくが、なにしろ大きい。

実際に今のデスクのところに設置すれば相当な迫力だろう。

すぐに鬱陶しく煩わしくなるかもしれない。そうなったとき、買いました、飽きましたというわけにもいかない。何万もする新品の大きな机をどうしたらいい。

なかなか思いきれずにいた。

息子が家を出ていくというではないか。

ベッドも机も置いていくという。自分で新たに部屋のサイズに合わせた小型のものを揃えるらしい。

・・・・・。❤️

やはり無印の、大きな大きな幅140センチのデスク。キャスターつき。

「ねえねえ、それ、私のにしていい?」

「べつにいいよ。」

彼は彼で新居に夢中でどうでもいいといった風情で気前がいい。

「じゃあさ、あそこ使っていい?」

「たまに帰ってきたとき、俺はどこに寝るんだ」

「そんときはどくよ、もちろん。でもあれだけ近かったらそうそう泊まらないでしょ」
私は私で自分の部屋確保に夢が広がる。

「ま、そうだろうな。」

たっぷりと大きな机。ベッド。しかも個室。

ふふふふ。

ふふふふふふ。