ダブルの箱リンゴ

先日、知人から箱でリンゴを頂戴した。

母のところに少し、持っていく。少しというのは、母も自身で毎年、リンゴを注文しているからだ。母からお歳暮として皆さんに贈る。それを自分のところにも同じものが届くようにしている。

しばらくしてやはり母からも黄色いリンゴをもらった。

「あなたのところ、どうせたくさんあるから少しでいいでしょ」

それが二週間前。リンゴもいよいよ一番下の段になってきた。

せっかくいただいたものを、傷む前に楽しめそうだとホッとする。

昨日、夕方、母がまたしてもリンゴを持ってやってきた。今度は紅くて小ぶり。紙袋からこぼれ落ちそうなほど入っている。

「あなたのところにあるの知ってるけど、これ。新聞でみたの、今、届いたの」

リンゴなんて野菜なんだからいっぱい食べなさいと言う。

「なんで?誰かがお母さんにって注文してたの」

母の友達が同じ新聞広告を見て贈ってくれたのかと尋ねた。

「ちがうわよ。お母さんが頼んだのっ!」

「え、黄色いリンゴが箱で来るのにこれも箱で頼んだの?」

忘れていたそうだ。

「もう一杯になってやんなっちゃう。お姉さん、果物好きじゃないし。あなた、お料理によく使うでしょ。ケーキとか。どんどん使いなさい。」

風呂場、トイレ、台所の簡単な大掃除をしてへとへとだった。

さあ、海外ドラマでまったりしようと横になったところに山ほどのりんご。

とりあえず冷蔵庫にしまった。しかしドラマを観ていても集中できない。

うちにあるリンゴ。このリンゴ。どうやってうまく消費しよう。

それがぐるぐる頭の中を回って大きく占領する。

突然ドンっとたくさんの課題を渡されたようで気が重い。

食べ物だ。あくまでも、おいしく、いい状態で食べ切りたい。

おいつかない、どうしよう。どうしようどうしようどうしよう。

ガバッと立ち上がる。

一気に5個、剥いて、煮リンゴにした。

レモンと砂糖とシナモンと。鍋いっぱいのリンゴがやわらかくしぼんでいく。

台所中に甘い香りが立ち込める。

幸せな平和な香り。

疲れていたはずなのに、なんとも長閑な気持ちになった。

今朝、それをたっぷり入れてケーキを焼いた。

「お、うまい」

二人は気に入ったようだった。よかった。あと二、三回、これを作ろう。

プレーンヨーグルトも買ってきた。ソースにしてもいい。

しばらく朝は洋食でいこう。

・・・それにしても忘れるだろうか。リンゴが届くってこと・・。