好きなもの

朝ドラを観ていたら息子が出勤準備に着替えを持って降りてきた。

暖房が効いているものだから夫も息子もここで着替える。

「朝ドラ、面白いの?」

「うーん、面白いって言うか・・なんとなく習慣っていうか・・でもそうね、面白いかな」

「はまってるな」

「はまってるってほどでもないよ」

「でも好きなんだな」

「好きってほどでも」

「毎朝観てるだろ、そういうのを好きと言うんだ」

・・・!

そうなの?

私の中での好きっていうのは、もう、いそいそワクワクしちゃって、それがあればご機嫌になって、テンションがすぐあがって、ブルーな気分も忘れて・・・。

この程度を好きって言うのだったら、私には好きなものがたくさんある。

一人のドトール、軽いエッセイを読むこと、海外ドラマ、ひなたぼっこ、家族とのわちゃわちゃした食卓、ラジオ。

でもそれは「わりと好き」っていう類いで、好きって断言するほどのものじゃないと思っていた。

夫のラグビーのように、それに接していると全てを忘れるっていうほど夢中にはならない。

夢中になるもの・・って・・無いんだなあ。

いつも頭の隅っこで時間や家事の段取りを意識している。

「そうやって毎朝録画までしてるってのは好きっていうんだ」

朝、バタバタするので落ち着いて堪能したいのでドラマは録画している。なんとなく筋を追って把握するのだと、役者の表情や言った台詞が流れてしまう。どんな言葉でどんな表情で、その登場人物はどんな人なのか、じっくり観たい。

あ、それが好きってこと?

そうか。そうだ。私はドラマがすき。

スリルやスピードのない、争いのない、日常の続きのようなのんびりしたドラマが好き。

そうかそうか。

「じゃ、行ってくるんで」

「へえへえ」

録画を一時停止して玄関に見送りに行く。

一言、一つの振る舞いですらちゃんと、観たい。

「楽しめ」

息子がいつものフレーズを言う。

「楽しみます」

今日も私はドラマを楽しみます。