昨日は息子が他社と早めの忘年会だった。
上司と相談した手土産を、開店と同時に人数分買ってから出社する。何度も地図で場所を確認し、大丈夫だよなと呟く。
「大丈夫だよ。どんな名店でも朝イチで売り切れるってことはないから。保存のきくお菓子だからきっと店内に在庫もあるよ」
偉そうに言うが、自分だったらもう、緊張でたまらないだろう。地図を見て場所をだいたい把握する息子とちがい、地図を見て、店の案内を見ても実際その地に立たないと位置関係がわからない。店にたどり着くまでが大騒ぎだと思う。
そのあと通常通りに仕事をして、夜は仕事関係の上の人たちと飲むなんて。
先日、気の置けない仲間とたった数時間、夜の街でご飯を食べるだけでもあれだけ緊張した身としては「立派になりんしゃって」と思う。
やや普段よりパリッとした格好の息子を送り出し、ニヤッとする。
さぁて。
今晩夕飯楽するぞ。夫はテレワーク、昼はカレーの残りがある。夜はお鍋。ぐうたら三昧じゃ。
このスケジュールを知った先週から秘かに今日という日を楽しみにしていた。
そのため、この日は歯医者の予約も入れなかった。
昼過ぎ、生協さんが来た。
やけに荷物が多い。母のものは今回頼まれていないのに。
お米・・・じゃないよな。隔週のキャベツやとトイレットペーパーだっけ。
届いた袋を開け、冷蔵庫に入れる。
あれ?ピーマンが2個ある。2個たのんだっけ。
キャベツも。え?大根も。 。
嫌な予感がする。
ああ・・やってしまった。合い挽き肉も豚こまも、冷凍の鱈の切り身もすべて、二つある。
インターネットで注文するとき、ダブルクリックをしてしまったらしい。それがカウントされたのだ。
肉の半分は冷凍した。野菜は今あるものを取り出し、入れる。
肉が入った分、冷凍庫も少し中身を出さないとならない。
ミックスベジタブルや冷凍ナス、かぼちゃ、これらを取り出してスペースを空けた。
山のように積まれた取り出した食材たち。
私のまったり計画は消えた。
ひたすら野菜を切ってベーコンとコンソメでスープを大量に作る。
大根と豚こまで煮物にした。豚こまが硬くなるかどうかなど言ってられない。塩麹を肉に塗る。
ほうれん草とミックスベジタブルとベーコンと卵を炒める。
カボチャを煮る。
途中、カレーの鍋をのぞくと思ったほど残っていない。容器にうつして、鍋を洗う。
わたしゃなにやっとんじゃ。
母のところに毎週注文の牛乳を届けに行く。
「少々手違いがあって、今、大量に大根、じゃがいも、にんじん、キャベツ、玉ねぎをオリーブオイルとベーコンで炒めてチキンコンソメで煮ただけの、スープ、作っているんだけど、もらってくれない?」
「あら、助かる」
これから出かけるところだった母は喜んだ。
「じゃあ、台所に置いておくから」
また家に戻りとっちらかった台所でとっちらかっていると、母が鍋をもってやってきた。
「ずうずうしいようだけど、これに入れておいて」
「いいよ。これにウィンナーとか入れてもいいよね」
「ああそうね。今晩それと残ってるオムレツの具でオムレツにするわ」
そう言ってひっこんだ。
なにかに役に立ったなら報われる。
と、そこにまた母が戻ってきた。
「あ、ウィンナー、入れないでね。ウィンナー。うち、あるから」
「なによ、あなたの家のお安いものは入れるなと。帰りにもっと上等なお高いのを買ってくるから余計なものはいれるなと」
笑ってつっこむと、にやっとうなずく。
「そう。へんなの、入れないで、このまんま、が、いい」
ご機嫌で帰っていった。
ちらかった台所を片付け昼ごはんを食べたのは午後3時。
鍋の予定の夕飯はコンソメスープと残り物のピーマンの肉詰めに変更した。
さあ海外ドラマを。意地でもまったりしてやる。
ゴロンと横になる。
立ちっぱなしだった足がジンジンする。
気がつくと、眠っていた。
目覚めると窓の外は暗い。
うう。私のまったり計画が。暮れてゆく・・・。