ごめん

残業続きでボロボロの姉が「年内、都内のホテルをとって一泊してやろうと思ってるけど来る?」と誘いにやってきた。

断った。

「うーん、年内はもういいや、ごめん」

「あ、そ」

「ごめんね」

なんとも言えない表情だった。当然、妹は「いいですねえ」と乗ってくるものと思っていたのだろう。

私とどうしても行きたかったわけでもないかもしれない。

自分に付き合う口実で家事から解放して連れ出してやろうという姉心だったのかもしれない。

それでもあの顔はちょっと寂しそうに見えた。

本当に寂しかったのかどうかもこちらの勝手な妄想かもしれないが、断っておきながら引きずった。

どうしてそこで陽気に「わーい」と喜べないんだ。

今の私は誰かとお泊まりをするというのは相当ハードルが高い。

近く予定されている数時間の夜の会合だけでも今から胃が痛い。もうこれ以上ハードルを設けたくない。

罪悪感の理由はそれじゃない。

姉との二人行動は疲れる。母とも疲れるが姉も、疲れる。

なぜだ。なぜ自分の実家にこんなに神経を張るのだろう。

私が私の思うままに行動をするといつも二人はがっかりする。がっかりさせないように気を使う。自分じゃなくなる。

そしてずっとそうしているから、二人に合わせているもう一つの人格の私が出来上がった。

もうできるだけ、あるがままの自分でいたい。

それで、思い切って断った。

「え・・」

という意外な表情が頭から消えない。よく眠れなかった。

ごめんね。ごめんね。ごめんね。

多分、付き合ってあげればいいのにと、母はやんわり私を咎めるだろう。

それでいい。

私が私であることを選んだのだから、相手にどう反応しろとは言えない。

初めはギクシャクうまくできないだろうが、何事も練習。そして人は慣れる。慣れて諦める。

お姉さんともお母さんとも小さく距離を保とうとする妹。

ごめん。