白いポンポン

寒くなってきた。

ラジオで「秋も深まってきたので」とパーソナリティが言った。ああそうか、今はもう秋も深まった時期なんだ。

夏が長かった。つい最近まで夏だった。今年の秋は圧縮してきゅっと密度が濃い。

去年、夫が百均で、なんのだったかすっかり忘れたが、お詫びとして、ご機嫌取りとしてどさっとあれこれ買ってきた。

大型スーパーに立ち寄って昼を食べたその目の前にたまたまあったので、買ったのだ。

いかにも間に合わせのようで、お手軽感丸出しで機嫌を取ろうとするその要領の良さに私は怒った。

宝石や花が欲しいわけじゃない。だけど、もうちょっと「トンさんのためにわざわざ」という風情を見せて欲しかったのだ。

プリプリ怒り、意地でも使うものかと去年はそのまましまった。

せっかく人の気持ちをと苛立つでもなく、苦笑いして夫は困った風だった。

それを、今週から使っている。

白い毛糸のてっぺんにポンポンのついた帽子に、毛糸の靴下、腹巻き。

腹巻はきつかったのでお風呂に入る時、髪を巻くターバンにしている。顔を洗う時のヘアバンドがわりにもなる。

なかなかいい。

帽子はあったかく、耳まですっぽりかぶる。

「あ、可愛い」

帰宅した妻の頭に白いポンポンが乗っかっているのを目ざとく見つけ喜んだ。

「可愛い可愛い、使ってるんだね」

「ふん」

可愛くないのは私である。

ぱぱっと昼ごはんを食べようと、大型ショッピングセンターのフードコートに立ち寄って腰掛けたら、その目の前に百均があったのかもしれない。自分の必要な何かを買いに立ち寄ったのかもしれない。

いずれにせよ、数分でも時間を私のために使ったのだ。

白にしようか黒にしようか迷ったかもしれない。

目についたものを適当に掴み取って「これでいいや」としたのではなかったのかもしれない。

夫の心はいつも綺麗なのだ。

ずるいとこもあるけど。嘘ついたりするけど。

人間通信簿「パートナーに対する可愛げの表現」の項目があるとしたら彼はAプラス、私はCだと思う。