結婚記念日。
今朝、夫が「結婚記念日おめでとう」とお辞儀をした。
「おめでとうございます」と私もお辞儀。
「これからもよろしくお願いします」
「いやいやどうもこちらこそ」
なんだか取引先会社同士の新年の挨拶のようだ。
31年目になる。
「いろいろあったねえ」
「わりとね」
どこの夫婦にもあるくらいの出来事が、私たちにもそれなりにあった。
もうこの人とはやっていけないかもしれないと、夕方プチ家出をしたことも、口をきかなくなった時期もあった。
生きていること自体が辛くて感情をなくしたときもあった。
四ヶ月の入院をして、生きるか死ぬかの体験が自分の身にも起きた。
退院する時に先生から
「まずは10年を目標に生きましょう」
と送り出された。
なにをいってるんだこの人は。当時は精神的にもおかしくなっていたのでその意味がわかっていなかったが、あれは比喩でもなんでもない言葉だったんだと最近思う。
震災の年だった。あれから10年、ちゃんとじゃないけど、どうにか生きた。
生きてきた。
とにかく生きてきた。
「今夜、早く帰るね」
「なにも特別なことしないよ」
「いいの」
そうはいったものの、缶詰のホワイトソースをを使ってクリームシチュー、冷凍していた揚げなすに冷凍していたミートソースをかけてチーズを乗せてグラタン、そして鶏のオーブン焼きを用意する。手抜き手抜きで見栄えを狙う31年目。
午後、息子の宅配受け取りを頼まれているので午前中のうちにパンを買いにいく。
この平凡さ。
そしてちょっと浮かれている。
幸せなんだなあ。今。