低空飛行

朝の散歩の途中、なんだかしんどくて「こりゃダメだ」と引き返した。昨夜、寝苦しかったが、熱が出ていたのかもしれない。

頑張れない。

早く帰宅した私に夫が驚く。

「トンさんが断念するくらいだから相当だよ。今日はゆっくり休みんしゃい」

そういいんながら「僕のご飯なに〜」と言う。

ロキソニンが効いているうちに早々と夕飯を作ってしまう。

頭がぼんやりして考えがまとまらない。豚こまとピーマンをオイスターソースで炒めたのと、市販の冷凍ピーマンの肉詰めをナスと一緒に焼いて残り物のミートソースとチーズを乗せた。

後はザクザク切ったキャベツとベーコンのコンソメスープ。

それから遅い朝食をとる。

食後もなかなか動く気になれずにいたが、立ち上がる。

今日はドラマ三昧の日としよう。

ぼんやりした頭でお盆を持ち流しに移動する途中、整理ダンスに腕か引っかかり、そのままお盆をひっくり返した。

ガッチャーン!

食器は見事に全部、割れた。

床に散らばる破片とドレッシング。

2階からテレワークの息子がすっ飛んで降りてきた。

「どした」

「ごめん。お騒がせしました。」

「大丈夫か、怪我しないようにな」

そういってまた戻っていった。

重たい頭とだるい身体で気分はとほほ。

とほほってすごい。誰が考えたんだろう。とほほって。こんな時の気持ちにとほほってピッタリだ。

残念でも、あーあ、でもない。とほほ。

部屋の隅まで飛び散った割れた食器を集め、雑巾で拭き、掃除機をかける。

思いがけず大掃除。このところしんどくていい加減にしていた床がピカピカになった。

それから母のところに用事があって顔を出す。

待ってましたといったように、先日、ピザパーティをした最後に、余ったピザをアルミホイルで包む息子の不器用な手つきに対し

「あなたがなんでもやってあげちゃうから、あんなことも上手にできないのよ」

と叱られる。そこから息子の幼少期の頃の話まで遡り長い長い説教が始まる。

とほほ、第二弾。ダブルとほほ。

「あ、あたし、冷凍食品出しっぱなしだから」

と切りあげ帰ってきた。

一人になっておかしくなる。いくらなんでも息子のアルミホイルの使い方まで言われちゃあ、どうしようもない。

あの人の小言からは逃れられん。あれが止まった時はむしろ心配したほうがいい。

あれが出ているうちは元気な証拠だ。

母の元気を確認したし、夕飯の支度も済んだし、床もピカピカだ。

さぁて。午後は海外ドラマでぐうたらしてやる。

今日中に治すと心に誓う。