カミングアウト

妹のような存在の友人からラインがあった。

仕事が辛くてやめるとき、お手つきで「いよいよだねお疲れ様」と送ったら「来月だよ」と返信が来てしまったあの友人。

あれこれこっちから誕生日とお中元と送りすぎ、うざったくやってしまったのは、彼女のことをどこか深いところで繋がっている気がするからだった。

子供の頃に両親を相次いで亡くし、歳の離れたお兄さんとやってきた。私と知り合ったのは19と20。同じバイトだった。初めて会ったその日から、昔からの知り合いがいると互いに感じていた。

そのバイトの中で仲の良かった仲間4人で今度、来月のどこかで会いましょうということになった。以前にもそんな話をもらったが、完全に心を閉ざし自分が惨めだった頃だったので体調が完全でないことを理由に断った。

「トン姉もこんな機会そうないから声をかけました。〇〇君が会いたがってるよ。〇〇さんもどうしても会いたいって。考えておいてください」

夜の8時20分。さあ寝ようかというときだった。

ほろ酔いでいい気分だったのが一瞬にしてピキンとなる。

会いたいけど会いたいくない。

大学の頃のふっくらしていた姿からはかけ離れた顔。口の両脇にある深いほうれい線は老化というよりはやつれた魔女のようだ。極端に細い肘。ぷっくり出た下腹。

歴史で習った餓鬼の絵そのもののようなこの容姿を晒すことへの恐怖。

彼女にはとっくにそんなの見せているので彼女と会うことにはなんのこだわりもない。が、その一つ外の枠に出るのが怖い。

そしてもう一つの大きな引っ掛かり、あれだ。

摂食障害。緊張したり慣れない場所に行くとなるとなぜか調子を崩す。最近ではだいぶよくなった。母と同席してもパニックになることも減った。

夫となら外で食べることもできる。

それでも、漠然とした不安があるのかリラックスして楽しんで食べることができないでいる。

会いたいけどそれが怖い。

迷ったが返信をその場で打った。

「連絡ありがとう。懐かしくて私もみんなに会いたい。ただ少し思うところがあって考えたいよ。みんなで会う前に一度二人で会いたい。実は話していなかったことがある。聞いて欲しいんだ。」

彼女には全開にしよう。

今の私を私はようやく恥だと思わなくなり始めている。

こうやって生きてきた。不完全なところも含め、全て公に出してやっていけはしないものか。病気が治ったら出ていくのではなく、図々しくこのままの私で。許してもらえないだろうか。

みんなに気を遣わせないようにとか、哀れに思われるとか、そんなことより、自分がどうしたいか。

このままの私の状態で付き合ってもらいたい。

そこんとこ、めんどくさいんだっけと軽く流しつつ仲間に入れてもらいたい。

いきなり全員は無理かもしれない。

母にも姉にも夫にも話せなかったあれこれ。

彼女になら言える気がした。

今なら、今の私なら。

ここを乗り越えたらまた一つ世界は広がる。

彼女がなんと返してくるのか待たずにベッドに潜り込んだ。