変えようとしないこと

もうっ。

夫がまた嘘ついた。日曜日にもあっての今日なのでガックリする。本人は嘘をついたり約束を破ることにそう抵抗がないので平気なのだが、こっちはやたらそういうことに敏感に反応するタチなので堪える。

話していても矛盾ばかりでなんとかこの場を収拾しようとさらに小さな嘘を重ねてくると、そこをいちいち指摘してやり込めたい衝動が込み上げる。

いかん、今は保留だ。

「とにかく土曜の夜にもう一度話そう」

「大丈夫もうしませんからあ」

子供がやるように手足をジタバタして戯けて見せる。

ちっとも可愛くない。余計に腹が立ってくる。

いかん、ここで理路整然と詰め寄ったらいかん。

とにかく、私はもう寝るから。土曜までこの話はしないで。その時にちゃんと話そう。

布団に潜り込んだがその部屋にも夫はやってきて

「ごめんねぇ」

と言いながらやっぱり布団に潜る。

むっかむっかする気持ちを無理やり抑えて眠りにつこうと優しい音楽を流す私の横でゴー、ゴー、スー、スーと気持ち良さそうな一定のリズムの寝息がしてきた。

早い。あまりに早すぎる。さっきの今で、もう熟睡だなんてあんまりだ。ちょっとは引きずったらどうなんだ。

引きずっているのは私だけという事実にこれまた腹が立つ。

いかん、いかん。そこまで責めるのはいくらなんでも。

深く深く息を吐く。

ふーっ。ふーっ。ふーっ。

自分の中にある黒いマグマを全部出し切るように息を吐く。

嫌なことは嫌だと言おう。

だけど思い通りに相手が変化しないことに腹を立てるのは違う。

嫌なことが生じるたびにいちいち、私はそれは嫌なのですと

伝えよう。

しつこく。何回も。まるで初めてかのように。

それだけでいい。

相手が変わると期待するのはちょっと傲慢。

神様じゃないんだから。

私も夫も。

寝よっと。

もう一回深く息を吐いて、目を閉じた。