カレーは平和だ。
みんな好きだし作るのも簡単だし。
食べる方も作る方も好きと楽だからどちらも機嫌がいい。
なのに、カレーの鍋をかき回していると、すごく愛情たっぷりの料理を作っている気になってくる。
昨日、夕方から歯医者だった。
冷蔵庫には先週作ったカレーの残りがタッパーに入って鎮座している。夜は帰りに歯医者の下にある肉屋でチキンカツを買ってあれでカツカレーでいいや。どうせ金曜だし、夫は飲んでくるだろう。頑張って作って空振りもしたくないし。
そう決めていた。
けれど思っていたより残りのカレーはほとんど具がなかった。
結局、一から作り、それをたす。たまたまあったセロリをローリエと一緒に放り込み、煮る。
いい具合に深みのある何日もかけて煮込んだようなのができた。
子供の頃、二日目のカレーが好きだった。
翌朝、冷たくなったカレーが少し硬くなったのを
そのまま、熱々のご飯にのせる。
学校から帰ってくるとおやつにもそれを食べた。
出来立ての夜に出されたのより好きだった。
歯医者から帰るとそのままシャワーを浴び、録画していた朝ドラを観ながら一人先に食べる。
作っておきながら自分はスーパーで買っていきたマグロの切り落としと味噌汁と南瓜と胸肉の蒸したの。
相変わらずの偏食だ。
最近、そんな自分も許すことにした。
後ろめたく思うのもやめた。
そうなるには私なりの辛さがあったのだ。これは私が生き延びるための術だったのだ。
昔、戦場にいた頃の名残。いつの日か、傷が本当に癒えたらこのこだわりも消えるだろう。
夜、二人にラインを送る。
先に寝ます〜。おやすみなさい。
いつもの文面。返事も待たずにベッドに潜ってストンと眠った。
数時間後、玄関のドアがバンっと閉まる音で目が覚める。
珍しく夫と息子が一緒に帰宅したようだった。
二人が陽気に喋っているのが聞こえる。
飲んでこなかったのか。
カレーの匂いが夫の会社まで届いた。
カレーマジック。