朝、歩いていて東の空から輝く光を放つ太陽を見て思わず「おはようございます」と心のなかで挨拶をした。崇拝するように。
そしてそうやっている自分にささやく声がする。
太陽の方が偉いってわけじゃないんだけど。
!
よく考えてみたらそうなのだ。だけどいつからだろう。私の中で太陽が一番偉くて、次に月、火星、土星、ずっと離れた位置で地球という順位みたいな位置づけが勝手にあった。
宇宙の中の天体であることにはみんな変わりなく、同じものなのに。
なんでだろう。勝手にそう思い込んでいた。
太陽が一番偉いと。
植物の中で薔薇が一番なんてことは考えたこともない。
動物でもライオンが一番だとか思ったことすらない。
でも自分の属する地球は宇宙の中で遅れている存在で、みんなに追いつこうと頑張っている星だという設定があったことに気がついた。
人類が月へ火星へと挑戦したり宇宙人の存在に大騒ぎしたりするのを見てきたからだろうか。
地球と太陽に優劣はないんだ・・。
なんだかすごい大発見をした気分だ。
思い込みってすごいな。
昨日、夕方、あまりに眠くて疲れていて、椅子に座ったまま音楽を聴きながら目を閉じた。
うつらうつら意識が遠のく。
普段歩きながら聴く曲の歌詞に意識を向けていると、なんだか切ないようなやるせないような気持ちが込み上げてきた。
過去の記憶が写真のようにパン、パンと頭に浮かぶ。
どこから私は道を踏み外したのだろう。
あのとき、あのとき、あのとき。
そうか、わたしはずっと悲しかったのか。
傷ついて悲しくて、それを振り払いながら闇雲に突っ走って溝に足を突っ込んだ。
立ち上がってもやっぱり一人で、途方にくれて、何かを恨み拗ねて拗らせたんだなあ。
辛かったんんだなぁ。頑張ったんだね。
目を閉じながら必死になってくるくる走り回っている自分が哀れで愛おしくて抱きしめてやりたくなった。
終わったんだな。
同時にそう思う。
そうだ、もう私を怖がらせたり傷つけたりする存在は、今の私の空間にはいないんだ。
いつの間にか消えていなくなっているのに、いつまでもそんなものがあるように思い込んで見えない何かに怯えて続けている。
まるで霧に向かって毛を逆立てフゥーっと威嚇している猫が、さーっと風が吹いてみると、向こうには何もいなかったように。
あれ、何もないじゃんか。
見えない何かがいると思ってあれこれ手に握り締め、何かにしがみついている。
ああ、もう終わったんだ。
目を開く。
ちょっと今いる世界が変わったように感じた。