わたしの家族

昨日、夫がクリニックの予約が12時半にとってあるのに12時15分なってもテレビを見ていたので黙って彼の手からリモコンを取り上げ、消した。

「とんさーん、ふふふ。トンさんは絶対だから。もうちょっとしたら出かけます」

そう言って二階に上がっていった。

まずこの段階で信じられない。いくら近所と言っても歩いて10分はかかるところだ。私だったらとっくに家を出ているのになぜもうちょっとしたら、なのだ。

それから私はリビングで本を読んだり、ソリティアをしたり、目を閉じて音楽聴いたりして過ごす。

海外ドラマを一話、見終わって時計を見た。1時を過ぎていた。お昼食べようかと考えているうちに思い出す。

あれ、あの人は出かけたのか。

そんな気配も音もしなかった。

しかしどっちにしてももう遅い。

研修の講師とかやって疲れてるのかもな。眠りこけているのを見たらそんな優しい気持ちもぶっ飛んで腹を立てるような気がしたのであえて、見に行かなかった。

やがて息子がジムから帰ってきた。

「じゃあ無断ですっぽかしたのか」

「多分。ちょっと覗いてみてよ」

「だってもう無理だろ」

二人して寝かしておこうと意見は一致しつつも、なぜかおかしい。

結局眠り続けた。やっぱり疲れているのだ、中年おじさん。

呑気に見えても神経も体力も使っているのだろう。

夕方、ガタガタと音がする。起きたのだ。

しかし、降りてこない。

「あまりのことに衝撃を受けて意味なく動き回っとる」

隣の自室にいた息子がゲラゲラ笑って降りてきた。

息子は二階に戻り、私はカレーをかき回す。

そこに夫が降りてきた。

「すみません。1日寝こけてしまいました」

「寝こけたのはいいけど、これで昼は寝たからいいもんねって夜中までテレビ見てたら、テレビの配線、切るよ。眠れても眠れなくても12時には布団にいること。月曜の朝のラグビー、観られなくなるよっ」

はい。ちゃんと早く寝る。ちゃんと体調管理、しますとリモコンを手にテレビをつけた。

ご飯前にシャワーを浴びて「ご飯ですよー」と声をかけたが息子の返事がない。

今度はこっちか。ジムに行くとその日の夕方眠ってしまうことがよくある。こっちもこっちで疲れたのだ。

私が声をかけているのに反応して夫がいそいそと「僕が呼んでくる」と階段を上がる。

「寝てたら放っておいていいからね」

わかった、と返事をしたのになかなか降りてこない。一緒に食べたいものだからなんとか起こそうと粘っているのだ。

「もういいよ、降りといで。」

「はーい」

「どうかと思うよ。自分が1日眠っておいて夕飯はみんな揃ってワイワイ食べたいもんだから、寝入ったばかりの息子を起こす。息子があなたを起こしたか」

「そうですね、そうでした」

寝過ごしは、あと5分したら家を出ようとその5分、ちょっとのつもりでベッドに転がったら夕方だったと聞いてもいないのにあまりの驚きを語る。

理解できない。

息子は8時に食卓についた。

私はいつものように9時に眠る。

みんなそれぞれのリズム。その接点でつながっている。

夜中、目が覚めたので足を忍ばせ一階に降りていくと案の定、夫がラグビーの試合を食い入るように見入っていた。

バンっとドアを開ける。

「そういうとこっ」

「あ、はい、もうちょっと、もうちょっとで終わるから」

時刻は12時20分。

あの自由さはもう、才能だ。