ありがとうって言おう。
ありがとうと言われると嬉しい。すべて自分が好きでやってることだと思っていたが、母に対しての心遣いの半分はもしかしたら、人間の株が上がったようないい気分になる、それが好きだったのかもしれない。
あげてるつもりでいたけど。欲しがってたんだ。
母からのありがとうを欲しがっていたのかもしれない。
それよりありがとうって言っちゃおう。
そっちの方がずっと簡単だ。
負けた気分になるのは、未熟な自分を感じるから。
そうじゃない。
愛されているってことだ。
息子にだと素直に言える。
知り合いにも抵抗なく言える。
夫と母と姉には言うけれどどこか構えている気がする。張り合っているのかなあ。
もういい。
何でもかんでもありがとうって受け取ろう。
勝手に愛されてるなあって感じてしまえばいいんだ。
ごめんなさいもちゃんと言えるようになろう。
主に夫に。
友人にも店員さんにも宅配の人にも道でぶつかりそうになった人にも言えるのに、夫には言えない。
母にも姉にも言えるのに夫にはそういえば言えない。なぜだろう。
悪かったね。
すまぬ。
申し訳ない。
これは謝罪じゃない。
ごめんなさいって、実は口にするのに最大級のハードルがあると思う。
一番素直な反省の言葉だ。
謝罪の記者会見でよく、関係者のトップが起立して申し訳ありませんでしたって言ったり、お詫びいたしますとか言うけれど、あれを「ごめんなさい」って言わないといけない決まりにしたら、観ている方はきっとすごくスッキリすると思う。
子供がお友達にごめんねって言う、あの勇気、大人になっても変わらない。それだけ一番ストレートに響く。
ごめんね。ありがとう。
一番近くで一番大事な人にこそちゃんと言わないと。なのに一番油断している人にはつい、言うのを惜しむ。
今日から夫にはごめんねって言おう。ありがとうって言おう。
ありがとさん、じゃなくて。ありがとう。
すまぬー、じゃなくてごめんね。
照れないでそうしよう。
ありがとうはもっともっと惜しまず家族みんなに使おう。
私の中にあるくだらない意地が溶けるだろう。同時にくだらない縛りも緩むだろう。
きっともっともっと自由になる。
そんなことを54にもなってしみじみ思った。