これも悪くない。
いい言葉だなと最近思う。
理想とするちょっと素敵な何か。
自分像だったり、家のレイアウト、身につける服。家族。
実際の私とそれを取り巻くあれこれはどんどん距離が開いてゆく。
昨日も、夫が事故で廃車になった代わりが全額保険金で保証されるとはしゃいでいるのを、息子が「反省が足りない」と怒る。
「だってぇ。今度こそ気をつけるもん。トンさんのために使うもーん」
「その赤ちゃん言葉で喋るのだって何度言ってもやめられなだろ。急に改めるとか言ってもそんな簡単に変わらないんだよっ。どうせ喉元過ぎればまた嘘ついて千葉に寿司食いに行くんだよ。一人で。家族を欺いて」
「ひーん、もうしないもん。あ、バスケの試合、始まってる、変えてい?」
「リモコンを置けっ。話の途中だろっ。母さんが観てたじゃないか、言ったそばからそれかよ、はい、もうダメ〜」
私の想い描いた家庭はこんなじゃなかった。
なんでもよく知っていて相談すれば安心できる回答をくれる夫。
それを頼りにし、尊敬する私と子供。
どこからこうなった。
「今日のカレー美味しい。余計なもの入ってないな」
息子が喜ぶ。スパイスを入れたりトマトを入れたり、ジャガイモ無しにしてみたり、スープカレーにしてみたり、カレー粉を使ったり、フレーク状のルーにしてみたり、我が家の味を求めあれこれやってみたが結局、彼にとってのお袋のカレーはハウスバーモント中辛にSB中辛ひとかけら、具はジャガイモ、人参、玉ねぎ、肉のみ、のド直球に落ち着いた。
夫婦で散歩に行くでもない。それぞれのんびり好き勝手に過ごす週末。
それでもなんとなく繋がっている。
これも悪くないか。
カレー同様、私自身、結局素敵な奥さんにも料理上手な母さんにもなれなかった。裁縫は開き直った。
これも悪くないな。
素敵じゃない自分が最近、愛おしい。
素敵じゃない家族も愛おしい。