スーパーブルームーンの夜

夜23時。玄関のドアがガンっと大きな音を立てた。

「母さんが起きるだろ」

息子の声がし、静かに扉が閉まる。

二人一緒に帰ってきたらしい。

それぞれ飲み会が重なった。息子は以前から決まっていた先輩との集まり。誘ってくれた当人ともう一人以外、あとは誰がくるのかわからないから憂鬱だと出かけて行った。

それでも誘われたら行く。学食で昼休みを過ごしていたことを思うと大きく変わった。

昨日作っておいた鯖と大根の煮物がある。夫の夕飯はそれ。それと味噌汁にきんぴら。決めていた。

が、なんとなく夫も飲んでくるとなるような気がしてぐずぐず様子を見ていた。しかし夕方になってもそんな連絡は入らない。

7時近くになって観念し、味噌汁を作り、お盆に皿を並べセットした。

できた。と、そこにLINE。

飲み会が入りました。すみません。食事いりません。

クマが手を合わせてsorryとやっている。

ああ、もう少し自分の勘を信じて待つべきだった。

窓からスーパーブルームーンを覗いたが、雲に隠れてぼんやりしてる。

一人気楽に大きな音で録画していた番組を観ながらご飯を食べ、先に寝た。

酔った二人が帰ってきた。

母さんが起きるだろ、と言った割にはご機嫌な息子も声が大きい。

「ただいま〜」

「おかえり〜」

布団の中から返事をした。

どっちが先に風呂に入るか揉めている。

手を洗え、うがいをしろと息子が夫に口うるさく言っているのが聞こえてくる。

寝付くまで聴いていたYouTubeを消した。

騒がしく聞こえてくる会話と物音、ときどき笑い声。聞きながら目を閉じる。

満月。

満ち足りているってこういうことか。

 

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