一日雨の昨日、朝食後寝転んでいると、夫もそれにつられて2階から雑誌を持って降りてきた。
テーブルで携帯を眺め、雑誌を読み、コーヒーを飲む。
「真剣で必死なんだっていうけど、そういう人はこういう時、勉強するんじゃないの?昨日も一日寝てるかテレビだったけどさ、それで真剣とか言っても認めない。」
英語の勉強のことである。教材は山のように買って積み上がっているのに箱すら開けていない。息子に聞いたところでは試験一回受けるだけの受験料もバカにならないらしい。
「あ、じゃ、これ終わったら、この試合が終わったら」
テレビの高校野球を指差す。
「今。真剣なら今でしょう。勉強しろって言ってない。家族のためとかいうけど、出世して欲しいなんて一言もいってない。そんなのどうでもいいもん。自分が好きでやってるんでしょう。会社でのポジションのためだかなんだか知らないけど。やらないならやらないでいいけど、必死とか真剣とか使うな。真剣を舐めんな」
あー気持ちいい。スッキリ。我ながら要点をぎゅうっと詰め込んで言えた。
「とんさーん」
「名前を呼ぶな。立場が悪くなった時に意味なく連呼して呼ぶのやめて。余計腹たつ」
よし。これも切れ味がいい。
ニヤニヤ雑誌を手に2階に上がり、教材を抱えて降りてきた。
・・ここでやる気か。
勉強を始めたので洗濯物を畳む。テレビも消した。
やれとは言ったが、ここでかよ。2階でやればいいのにわざわざギャラリーのいるところでやりたがる。
受験生かよ。
夫の分の洗濯物をテーブルの脇においた。
「後でしまってね」
するとさも迷惑そうに
「ちょっと後にして。今、ちょっと集中してるから」
なーにーをー。
「勉強してるから偉いとか思うなっ」
プリプリ怒って妻は2階の部屋でソリティアソリィティア。ちょっとTVer、ちょっとディズニープラス、またそリィティア。3時過ぎに下に降りてパンを食べ、また上がる。夫は納豆ご飯を山盛り食べて、また勉強。
息子は前夜から夕方6時半の声をかけるまで眠り続けていた。
夜はカレー。
それぞれが集まる。
「1日寝てたなあ。父さんは今日は模試3回もしちゃった」
「たまに勉強したからって威張るな」
憮然と息子が言う。
そういえば彼が勉強しているのは中学まではこのテーブルでやっていたが高校から見たことがない。
カッコつけしいだから試験に備えて真面目にやっている姿を見られたくないのだった。隠れてやっていた。
のらりくらり適当にやってますというポーズでいたいのは、あれも一種の反抗期だったのか。
就職活動の履歴書の書き方あたりから、ジタバタする姿を見せるようになった。
今では「終わらねぇ」と仕事の話をする。
二種類のメーカーのルゥを入れたカレーは評判が良かった。
日曜日。妻は当然、皿を洗わない。