夕陽

昨日の夕方5時過ぎに、ふらりと、本当にフラフラと外に出た。

あてもない、買う予定のものもない。だたただ、外気を吸って歩こうかと湧き起こってきた気分の流れにのってみた。

夕飯の支度もできている、財布を持って、疲れたらそこで引き帰そう。最悪、バスでもタクシーでも乗って帰ろう。

気の向くまま、歩く。

と、いいつつも、そんな風流な散歩で満足するわけもなく、私の中の子供が「どっか面白いとこ行こうヨォ」とそそのかす。隣町のリサイクルショップまで行ってみることにした。

夏のワンピースが欲しい。ただ、スポンと被ったらそれなりに格好のつく、今みたいに、そのへんをちょっと歩き回るときに着ていられるような、そんなチョイチョイ着。

夕方の街は構えていたよりは気温も下がり、やや風が吹いていた。夕涼みとはいかないが、少しだけ気持ちが穏やかになっていく。

完璧なんだな。

ふとそう思った。

体力もなく、特技もなく、不器用で、器量もよくない。

その不完全さが、完璧なんだ。これが、私。

もっとよくなろうと努力する必要もない。

これを維持しようとすることもしなくていい。

私の中心は子供の時から変わっていなくて、経験を通して価値観や感じ方、考える基準みたいなものが上書きされていった。

自分が価値のない人間だと思った時もあった。

人が普通にできることがどうして私はできないと、劣等感を持っていた時期もあった。

なんとか自分の存在意義や価値みたいな確証を持ちたいと思っていた。

けど。

そんなこれまでもひっくるめて全てが完璧。

今の私は、そんなことはだんだんどうでもよくなっていっている。

怒ったり、拗ねたり、いじけたり。笑ったり。やる気がなかったり。一生懸命になったり。

くるくるいろんな面が出てくる。

修行はもういいな。

ここだな。到達したかったのは。

多分これからも私はいろんな経験を積んでいく。そして感じ方も考え方もまた少しずつ変わる。

それでいい。

根っこの部分の魂みたいなところはずっと変わらずそれを眺めていくんだな。

毎日、なにもないようで、何かが起こる。

起こっては消えていく。

私はその中でふわふわと遊んでいる。

夕方。

ワンピースは目ぼしいものは見つからなかった。

これから塾に行く子供。配達の途中で休憩しているドライバー。焼き鳥屋の炭の匂い。そこに並ぶ人。満員のバス。

黒っぽい雲と白い雲と、その隙間に夕陽がさしている。

完璧。

いろいろあるけど全てひっくるめて、多分、完璧。