大事にとっておいた高級ドレッシング。
お中元に友人が送ってくれた星のついたレストランのオリジナルのもの。先日、誕生パーティの時にえいやっと開けた。
開けてみるとおかしなもので数日もするとなんの抵抗もなくジャカジャカ使う。やはり美味しい。ただ切っただけの冷えたレタスとトマトも洒落たサラダになる。
こういうことって私の生活にたくさん埋まっている。
一昨年、秋の初めのセールで買っておいたユニクロのTシャツ。デザイナーとコラボしたデザインのオフショルダーで、ユニクロの中では高めのものが安くなっていた。5000円以上するのが半額になっていたので白と水色、二枚買った。
それをいまだ下ろしていない。
自分の日常に着るのにはちょっともったいない。トイレ掃除、部屋でゴロゴロ、スーパー、公園のラジオ体操、そんなところに着ていかなくても。
自分のそんな生活範囲を恥じてもいないし、卑屈にも思っていない。この小さな世界が居心地よく好きだ。
オブションで電車に乗ってどこかいくときのためととっておいているがこの猛暑、今年もどこにも行かず終わってしまう。
ドレッシングと同じでいったん袖を通し洗ってしまえば次からは惜しげなく乾いたそばから連日着るだろうに。
このとっておく癖。
やめてみようか。
クリーニングから戻ってきた麻のワンピース。
引き出物にもらったティファニーのワイングラス。
ここ一番で使うつもりの香港土産の顔パック。
使っていない新品のフェイスタオル。
集中力が戻ったらちゃんと腰を据えて読もうと思っていた本。
お客さんが来たときのためにセットするつもりだったちょっと上等なトイレマットセット。
このトイレマットを買ったのは息子が幼稚園のときだった。
春のセールだった。新学期、家庭訪問で若いお嬢さん先生が我が家に来たとき、それからママ達が集まったとき、ちょっとお洒落してこれを使おう。
素敵なお家と思われたくて見栄っ張りで買ったのだ。
しかし1日おきに平均7.8人やってくる幼児達に解放するトイレにはやはりもったいなく、しまっていた。ママたちが集まったときも、まあ今日はいいやと、付け替えなかった。家庭訪問の先生は家には上がらなかった。
いつか家族が大人になったとき、その時までとっておこう。
あれからはや、20年。
洗面所の吊り戸棚の化石となりつつある。
本も集中力がみなぎり意欲が戻るのを待っていたら、これと同じ事になる。
隙間隙間、数ページでもいい。キラッと光る言葉に出会えたらそれで奇跡。その瞬間のために無責任にあちこち贅沢につまみ読みをしよう。
ウォッチリストに溜め込んでいる映画も。
最後まで集中して見れなくても、海外ドラマ感覚でブチブチ中断しながら観ればいい。
ドレッシングはあと二本、残っている。
今のを使い切ったら続けて開栓しよう。
バルサミコ酢も使うぞ。