ナッツと枝豆ととうもろこし

夫が台所に茹で上がっておいてあったとうもろこしを立ったまま食べて息子に見つかった。

「こら、行儀悪いぞ。」

「トウモロコシは父さんの大好物だからいいんだもん。」

そんな理屈、初めて聞いた。

夫は枝豆とトウモロコシと納豆が大好きだ。ご飯、味噌汁、納豆があれば朝はそれでいい。

枝豆はどんなに手の込んだ料理を並べても、そこから手をつける。ちょっとひとつまみでは止まらない。その皿が空になるまで、ものすごい勢いで食べ尽くす。

「もっと落ち着いて食えよ。ガツガツすんなよ。」

「あ、ごめ。父さん枝豆大好きだから。」

「大好きならどんな食べ方してもいいってわけじゃないだろ。好きならもっとゆっくり味わえ。」

あんまり息子のチェックが厳しいので食卓での「二人の席を離し、私が真ん中にはいったが、変わりはなかった。

毎度毎度怒られる夫。

「こら、テレビばっか観てんなら消すぞ。枝豆食ってからテレビ観てなにも食ってねえじゃねえか。作った人のことも考えろ。自分じゃなにも作れないくせに。」

あえてここでは黙っているが息子だって自分じゃ何も作らない。

「あ、ごめんごめん。」

内心、スカッともするので間に挟まった私は何も言わない。

しかし、心の奥底では少し後ろめたい。

自分じゃ何も作れない夫。確かに。が、私は自分じゃないも稼げない妻なのだ。

自動的に食べ物が出てきて汚れ物は綺麗になり、部屋は掃除される夫に対し、同じく自動的に毎月毎月口座に生活費が入ってくる妻なのだ。

トンさんありがとねと夫は言うが、私はお給料を振り込んだよと言われたときだけ、ありがとうと言う。

そして夫はそこをついてこない。

昨日、夫のお盆にミックスナッツの小袋をのせておいた。

食後、それを食べて空になった。

「このナッツ、おいしんだけど、もっとある?」

ちょうど息子が1日寝こけて二人の夕飯時だった。

「息子のお盆にも乗ってるでしょ。あれ、いいよ」

すると夫は立ち上がりそれをとりに行く。

いいの?いいの?これ、もらっちゃっていいの?

ほっぺを輝かせ喜ぶのだった。