お誕生会

7月は姉と夫の誕生日がある。10日の姉と30日の夫。

二人合同の誕生会を昨夜、我が家で行った。

狭い台所に大人が五人、ぎゅうぎゅう集まって食べる、飲む。

それぞれ相手の話を聞いているようでみんな自分が主役になりたい人たちばかりで話題があっちに飛びこっちに飛び、時々二つの話題が並行であっちとこっちで始まる。

父がいた時とは違うこの自由さ。

父は厳しく格好良く、きちんとした人だったから、みんなどこか緊張してお行儀も良かった。

それぞれ今でも恋しく懐かしむのだが、おっかない人のいない食卓は気楽で自由だ。

自由に立ったり座ったり、それとって、それ食べたい、会社はどうなの、今度ターラー観に行くんだ、話は途切れない。

母は姉が主役で嬉しそうだった。

父が亡くなってからずっと、実家との会食がどうしてもダメだった。

翌日かその晩に必ず食べたものを受け付けなくお腹が痛くなる。その数日前から落ち着きはなくなり、その後数日間は意味なく悲しくなり落ち込む。

何をやってもダメな人と大勢の前で笑われると、自分が全否定されたようで消えてしまいたくなるのだった。

ゴロは前に出てとれよ。

亡くなった父が子供の頃、キャッチボールをしながら教えくれた。

簡単そうなことは油断しないで前に進み出て素早くより良い方法でキャッチして投げるんだ。

高く上がったフライはボールの下にもぐれ。

怖いと思う時こそ、その真下に潜り込み、ミットを上げて構えろ、じっと見据えて待つんだ。

 

ずっとずっと逃げてきた。自分から立ち向かって真下に潜り込んでみるか。そろそろやれる気がする。

うまくできなくていい。ダメ出しされる前提でやればいい。

私の方から声をかけ、私の家に来てもらった。料理も何もしなくていいから手ぶらできてくれとそう言った。

二人を呼んで誕生会をすること自体が私にとっては高く高く上がったフライなので、料理は簡単なゴロにした。

頑張らず作り慣れているものだけと、メインはピザを取る。

姉の好きなササミのフライを山のように揚げた。夫の好物の枝豆ときゅうりのピリ辛漬け。息子の機嫌取りでエビフライとナスのフライ。

サラダは市販のドレッシング。

作るだけ作ってテーブルに並べ、あとは好きにやってちょうだいと座っていた。

それぞれ勝手に食べ、しゃべり、デザートのアイスクリームを食べる。

落ち度はないか、ちゃんとできるかはもうやめた。

何をやってもダメ出しをされることに卑屈になるんじゃなく、そう言うホームドラマの中のワンシーンなのだ。

へへへ、何やっても抜けてるんだよねえ。

それが家族なんだ。やっと二つの家が一つになった気がする夜だった。